1998年の夏のことだった。パリのカルナヴァレ博物館で、私はフランツ・リストに出会った。 肖像画に描かれていたのは、28歳のリストだ。すらりと伸びた長身を黒衣に包み、金茶の髪が縁取...
...Memories & Discoveries 24/08「ボレロ 永遠の旋律」
夏の終わりが近づくと、モーリス・ラヴェルの音楽が聴きたくなる。 たとえばピアノ協奏曲の第2楽章。4分の3拍子の静かなピアノ・ソロのあと、ふわりと登場するオーケストラ。繊細な弦の和声...
...HIT LIST 2024「海辺のポーリーヌ」
人生のどこかのタイミングで、ロメールの映画を観る時間は必要だ。 私にとっては15歳の夏だった。『海辺のポーリーヌ』の主人公に自分を重ね、どこを切り取っても絵になるフランスの暮らしに...
...Memories & Discoveries 24/05「イタリアへの旅」
紺碧の海と断崖に並ぶ家々、そして黄金の光にかすむ山々。 南イタリア、アマルフィ海岸。今も変わらぬ楽園を描いた画家は、22歳のフェリックス・メンデルスゾーンである。北方のドイツからこ...
...Memories & Discoveries 24/04 「クラシカロイドで朝食を」
この春、仙台フィルハーモニー管弦楽団と名指揮者・高関健の「進時代」の船出として、その名も「クラシカロイドコンサート」が実現した(3/20 日立システムズホール仙台 コンサートホール...
...Memories & Discoveries 24/02 「パリの思い出」
私にとってパリは、何度訪れても飽きない街である。 美しいオスマン建築の街並みに、大小の美術館、ストールをゆるく巻いて足早に歩く女性たち──それらをぼんやり眺めているだけで五感が刺激...
...Memories & Discoveries 24/01「バロックの淑気」
「淑気」とは冬の季語で、正月のめでたく厳かな気配のことをあらわす。 磨き上げた部屋で食事をしたり、人少なで静謐な街を初詣に歩いたり。「淑気」あふれる場面には、バロック音楽がよく似合...
...謹賀新年
故郷・新潟へ移住して、3年目の正月である。 めずらしく覗いた青空に浮き立ちながら海に祈り、姪や甥と和やかに過ごしていた午後、大地が大きく揺れた。 テレビの画面には「つなみ にげて」...
...Memories & Discoveries 23/10「CLASSICAL MAGIC vol.2」
この秋、早見沙織さんの全国ツアーファイナル公演にご招待いただいた。 すべてが素晴らしかったが、とくに哀切だった〈祝福〉の中で、ふいに流れたバッハには涙が止まらなくなった。主よ、人の...
...Memories & Discoveries 23/08「エリザベート1878」
ハプスブルク帝国が最後の輝きを放った19世紀末、「シシィ」の愛称で親しまれ、ヨーロッパ宮廷一の美貌と謳われた皇妃エリザベート。彼女はなぜ、流浪の旅を続けたのだろう。 ずっと、それが...
...HIT LIST 2023「遠い呼び声」
ある夜、突然秋がやってきた。 永遠に終わらないように思えた夏がふいに消え去り、ふうん、と呟く。物事の終わりって、案外こんなものかもしれない。 気づけば白露の候で、すっかり日も短くな...
...Memories & Discoveries 23/07「モーツァルトの光と影」
ラジオ収録の少し前、東京フィルハーモニー交響楽団の定期公演で、モーツァルトの協奏交響曲を聴いた。第1楽章、涙のまま駆け出すような上昇音型に心を掴まれ、やがて舞い降りた2台の音の輝き...
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