書評『ベルリン・フィル』

日経新聞 2025年7月5日付朝刊に、下記の書評を寄せました。

良書を通して「音楽と政治」への思いを執筆する機会をいただけたことに深く感謝しつつ、再録します。

ベルリン・フィルハーモニーをはじめて聴いたのは学生時代、サイモン・ラトル体制での初来日のゲネプロ見学だった。

くつろいだ会話ではじまったマーラー5番の、すさまじい集中力。伝統に縛られない、自由なオーケストラだと思った。歴代指揮者たちとの確執など、後年、音楽記者になるまで想像したこともなかった。

本書は、国際関係史や冷戦史を研究する著者が、この世界最高峰のオーケストラを題材に描く、150年にわたる裏ドイツ史である。ナショナリズムの中で生まれた楽団が、どんな苦難を乗り越え、人々を魅了する存在になったのか。それは指揮者という謎めいた職業の成り立ちと、聴衆の変化の歴史でもあり興味深い。

書評『ベルリン・フィル』
https://note.com/_maitakano/n/n6dc0788840b6

 

音楽は、暗闇にも希望の光をともす。
その光と影の両面を、本書は誠実に照らし出す。

年末年始にぜひ。

芝崎祐典 著
『ベルリン・フィル 栄光と苦闘の150年史』中公新書
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2025/05/102856.html

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