Memories & Discoveries 25/10「東欧への旅」

歴史に心を奪われたきっかけは、東西ドイツの統一だった。

1989年の秋のこと。熱狂した人々がベルリンの壁を打ちこわし、抱き合い、歓喜を叫ぶニュース映像を見て、子どもながらに心が震えた。不動に見えた「国」という枠組みはいまだ動揺し、変化することがあるのだ──。この衝撃は、歴史上の人々への共感という意味で、私の原体験となった。

東欧とは、ヨーロッパを東西に二分したときの東にあたる地域である。ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、そして旧ソ連領の国々。旧共産圏とも重なっていて、私はその歴史に惹きつけられる。そしてそれらの国々は、作家にせよ絵画にせよ映画にせよ、独特の魔術的な想像力をもって、私たちを魅了する。

もちろん音楽も同様である。旧ハプスブルク帝国領でもあり、ショパンやリストについて著した経験からも、訪れたい土地がたくさんある。今回はそんな「まだ見ぬ国々」への憧れをこめて、3つの作品をご紹介しよう。

 

東欧への旅──ラファエル・クーベリック「わが祖国」 他

今回は10月にお話した、ルーマニア、ハンガリー、チェコを巡る「音楽旅行」をnoteで振り返りました。

友人のブカレスト訪問がきっかけで、この秋ふいに盛り上がった東欧への憧れ。知れば知るほど奥深い歴史と音楽に、興味が尽きることはありません。

中でも一番の憧れは、やっぱりプラハ。ラファエル・クーベリックとチェコ・フィルの再共演を記録した1990年の動画(下)を見ているだけで、誰しもぐっと、心にこみ上げる感情があるはずです。

長い歴史と人々が守り抜いたその街を訪れたとき、このメロディはどんなふうに響くのか。近いうち、ラジオでもお話できたらと願っています。

 

 

クラシック・プレイリスト、次回は12月に放送予定。毎朝5時台、JFN系列38の全国FM局とradikoタイムフリーでもお聴きいただけます。

出演|Memories & Discoveries

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