HIT LIST 2021 SS「風立ちぬ」

計画した人生を手離す覚悟を持て
この先に待っている人生のために
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We must let go of the life we have planned, so as to accept the one that is waiting for us.
Joseph Campbell

この夏、海を見ながら、脱皮していくみたいな内面の変化を感じた。

なにに幸福を感じるか、どんな自分でありたいか、心地いいと思う場所で暮らしてもいいんじゃないか、と。誕生日を前に新しいイメージボードを描き、今は、そこへ漕ぎ出していくのが楽しみで仕方ない。

やりたいことに突き進むことが楽しい。私はたぶん、一生こうなのだ。

新しいはじまりを前に、1年を振り返ろう。今回は、たくさんの励ましをいただいた「お題箱」へのメッセージに感謝をこめて、とっておきのご質問にまつわる随想を綴ってみる。

●morning routine

モーニングルーティンとナイトルーティンが知りたいです!

朝型生活は永遠のあこがれ。この一年で在宅時間が長くなり、「いかに心地よく生きるか(QOL)」に重点を置いた結果、いよいよそれが現実のものとなりつつある。

ルーティンは以下の3点:

☑ athletiaのスイッチング アロマルームミストで脳を起動する
「美しさは鍛えられる」がコンセプトのスキンケアブランドより、深い森をイメージした「GREEN RAY」を愛用中。
https://www.athletia-beauty.com/jp/ja/

☑ カーテンを開けて朝日を入れ、深呼吸する

☑ アイノ・アアルトのグラスで水を1杯飲む

ポイントは光と香り、そして音。朝、耳に入れるものは1日のリズムをつくるので雑音は絶対に避けるようにしている。陽光や静かな雨が降りそそぐ朝には、用意してある朝用のプレイリストをかけるのもいい。ほんとうは優雅にストレッチなどできれば最高だが、機嫌のいいときほど早く原稿に向かいたいので割愛。

recommendation

「マンガと音楽の甘い関係」を拝読し、高野さんのオタクぶりに親近感わいてうれしかったです!

「ブリジャートン家」のマニアック解説がおもしろかったです。Netflixの作品やイベントなど、ほかにもおすすめがあれば教えてください。

繰り返しになるが、わたしは昔からいろいろなものに偏愛があり、それらに対しては一歩も譲りたくないところがある。

自分自身をニュートラルな場所に置いて、さまざまな偏愛から自分にフィットする言葉や匂いや音、そしてものの考え方といったエレメンツを採集している。ゆえに、SNSや仕事ですれ違うだけの方には「ビジネスオタク」だと思われがちという弊害もある。

「片手間」と言われるのはくやしいし、とくにこの1年はアニメ誌の連載や新しい仕事がきっかけで幅広い良作に出会っているので、なんとかわかりやすく「真実(ガチ)」を発信していこうと考え中だ。

ご質問の「おすすめ」については以下のとおり:

☑ Netflixオリジナル作品

『ブリジャートン家』がお好きな方にまずみてほしいのは、英国王室つながりの最高傑作『ザ・クラウン』。ファッションやインテリアに刺激を受けつつ、知られざる英国現代史に開眼し、人間の心理を深く描き出す物語に号泣できる。音楽もエモーショナルで、非の打ち所のないパーフェクト・ドラマ。扱われた事件について歴史的な補足をしたいときは、『ハウス・オブ・ウィンザー 英国王室の歩み』もおすすめ。

ファッションつながりでは『エミリー、パリに行く』『NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち(BOLD TYPE)』『ザ・ポリティシャン』と合わせ、社会活動とともにある現代のファッション誌を眺めているような気持ちになる。(グウィネス・パルトロウはたぶん、永遠に好き。)

ヒューマンドラマなら、おなじみ『クイーンズ・ギャンビット』『HALSTON/ホルストン』がよかった。オリジナルアニメでは『GREAT PRETENDER グレートプリテンダー』がお気に入り。外画吹替え声優が多数出演するこなれた空気感と音楽で、アニメだからこそ破天荒な世界旅行気分も味わえる。

☑ イベント

『ブリジャートン家』にちなんで紹介した展覧会「キューガーデン 英国王室が愛した花々」がこの秋、東京都庭園美術館に巡回する。18世紀半ばの開園以来、世界の植物学研究をリードし続ける英国王立植物園「キューガーデン」の歴史を、ボタニカルアートや関連資料130点とともに紹介する展覧会。その発展に貢献した国王ジョージ3世の妃シャーロットがフィーチャーされ、彼女が愛したウェッジウッドの「クイーンズウェア」なども登場する。

最高にふさわしい舞台で、ダフネ気分を味わいたい。王妃が愛したモーツァルトのプレイリストも忘れずに。

https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/210918-1128_TheRoyalBotanicGardensKew.html

25ans CULTURE CLUB 21/04「ブリジャートン家」

男たちの英国王室

●what’s in my bag

「バッグの中身」が大好きです。また拝見できる機会を楽しみにしています。

わたしも誰かの「バッグの中身」を見るのが大好き。左上より時計回りで:

1. A. P. C. のキーリング/その昔、雑誌「Olive」で憧れたパリのメゾン。青山の「リスン」と同じビルに入っているためふらりと立ち寄り、一目ぼれした。

2. Aesopのプロテクティブ ボディローション/しっとり健やかな日焼け止めローション。SPF50 PA++++

3. Jo Maloneのコロン/大定番のイングリッシュペアー&フリージア。後述の英国ミステリ『見知らぬ人』に登場し、思わず新調してしまった。アンバーとパチョリも効いていて、秋に向かうこの季節にぴったり。

4. CHANELのルージュ アリュール ラック/マスク生活の長期化で、ひさびさに投入した落ちないリップ。

5. ウォレットとパスケースにはこの夏、シックな黒を投入。全体が引き締まり、気分が変わった。

●favorite music

角野隼斗さんのコンサートレポ、読んでいて涙が出ました。(略)ふだんはどんなコンサートへ行かれるのですか?

角野隼斗との出会いは、この1年を象徴するものの一つ。

新時代への扉を開いてもらい、取材を通してたくさんの方にあたたかいメッセージもいただくことができた。ピアニストを取り巻く環境が激変している今、日本人とピアノ/クラシックの関係をひも解くような試みもしてみたいと考えている。

ほかにも今シーズン(2020/21)は、ショパンとリストにまつわる執筆を続けている関係で、ピアノの演奏会へ赴くことが多かった。強烈な印象を残すのが、三浦謙司の凱旋リサイタル(5/19@Hakuju Hall)。力強いショパンと、高みへ高みへと昇っていくリストの〈ロ短調ソナタ〉が、それぞれの生涯と重なって涙が止まらなかった。どんな史料を見つけ出すことよりも、音楽は霊感を与えてくれる。

Memories & Discoveries 21/02「現代のショパン」

●favourite book

愛読書はなんですか?

本好き人間にとっては悩ましいご質問だが、傍らに置いて何度も何度も読み返す座右の書という意味なら『東の海神 西の滄海』(小野不由美、新潮文庫)。物語、文体、教訓とときめき(=延王)、すべてがつまっている。『残酷な神が支配する』(萩尾望都、小学館)も同様なのだが、ここは文庫1冊で完結する小説にしておこう。

影響を受けた少女小説は数多いが、大人になっても揺るがぬ品質は小野不由美ならでは。6月に文庫化刊行を終えた「ゴーストハント」シリーズの再読も、今年の思い出の一つだ。最終巻『扉を開けて』(角川文庫)での伏線回収のカタストロフィと、麻衣(同名なのも至福)の凛々しい孤独を愛している。

この夏の最新ヒットは『見知らぬ人』(エリー・グリフィス/上條ひろみ、創元推理文庫)。ヴィクトリア朝時代の作家ホランドの旧邸宅にある学校で起こる、怪奇短編「見知らぬ人」をなぞった殺人事件。3人の女の視点から解き明かされるクライマックスに、大興奮間違いなしの傑作だ。2010年代のトレンド満載のファッションやインテリアは海外ドラマを観ているよう。

紅茶を飲んではシェイクスピアを引用する──伝統の英国描写でアガサ・クリスティを再読したくなり、『春にして君を離れ』(訳/中村妙子、早川書房)も再読した。友人・小橋めぐみ氏とのアフタヌーンティを思い出し、ミス・マープル・シリーズから通読してみようかな、と考えている。

●night routine

#incenserecipe、いつも楽しみにしています。先日は青山のリスンも行ってきました。もしお香以外のおすすめがあれば、ぜひ教えてください!

最後は就寝前のルーティンということで、夜に愉しむ香りを。

Santa Maria NovellaのLe Candele delle Ore(時のキャンドル)は、朝昼晩、そして夜の香りが一日を彩る。最愛の「夕暮れ(Vespro)」は晩鐘の時間をイメージしていて、

トップ:ベルガモット、ローズウッド
ミドル:アイリス、ジャスミン、イランイラン、スズラン
ベース:アンバー、バニラ、ベチバー、マスク、ウッディ、サンダルウッド

と好きな香料しか入っていない。イタリアの教会やモンテヴェルディの宗教曲を思い出す、やすらぎの香り。

わたしにとって「いい香り」とは、くちなしの匂い、祖母のおしろい、ヨーロッパの街角ですれ違いざまに匂い立つパウダリーな香水、アールグレイの茶葉に香るベルガモット。最近はインセンス愛が高じて、寺院の線香までいとおしい。CLARINSのセラム コール ポー ヌーヴ プリュス白檀の香はもはや必需品である。

秋に向かうこれからの季節は、キャンドルの火が恋しくなる。選びぬいた香りに包まれながら、静かなぬくもりと光を見つめ、明日を生きるための火を灯す。そんな自分でありたいと願う。

 

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