HIT LIST 2021 SS「さあ、あなたの暮らしぶりを話して」

話せることならなんでも話すわ、まじめに聞いてくれるなら。
わたしの会ったある博学の青年、テルの上にすわってた。
「あなたはどなた?」わたしは訊いた、「あなたの探すものはなに?」     -アガサ・クリスティ

女王と同じ誕生日が、今年もやってくる。新しいはじまりを前に、1年を振り返ろう。

今回は「お返事スペシャル」。新ホームページ開設から1年、たくさんの励ましをいただいた「お題箱」へのメッセージに感謝をこめて、とっておきのご質問にまつわる随想を綴ってみる。

●morning routine

モーニングルーティンとナイトルーティンが知りたいです!

朝型生活は永遠のあこがれ。この一年で在宅時間が長くなり、「いかに心地よく生きるか(QOL)」に重点を置いた結果、いよいよそれが現実のものとなりつつある。

おすすめのルーティンは以下の3点:

☑ athletiaのスイッチング アロマルームミストで脳を起動する
「美しさは鍛えられる」がコンセプトのスキンケアブランドより、夜明けの山頂をイメージした「AT THE TOP」を愛用中。
https://www.athletia-beauty.com/jp/ja/

☑ カーテンを開けて朝日を入れ、深呼吸する

☑ アイノ・アアルトのグラスで水を1杯飲む
ひと目惚れの小さなグラスが丁度いい。白湯は美味しくないしお年寄りになった気分になるので、いまは水で十分だろう。

ポイントは光と香り、そして音だ。ルーティンの後はBSの「ワールドニュース」でBBCなどをチェックしながら朝食をとり、身支度を整えるのだが、朝、耳に入れるものは1日のリズムをつくるのでワイドショーなどの雑音は絶対に避けるようにしている。

陽光や静かな雨が降りそそぐ朝には、用意してある朝用のプレイリストをかけるのもいい。ほんとうは優雅にストレッチなどできれば最高だが、機嫌のいいときほど早く原稿に向かいたいので割愛。丁度いい準備体操(露伴先生の以外)を知っている方がいらしたら、ぜひ教えてください。

recommendation

「マンガと音楽の甘い関係」を拝読し、高野さんガチオタクだったんだと親近感わいてうれしかったです!

「ブリジャートン家」のマニアック解説がおもしろかったです。Netflixの作品やイベントなど、ほかにもおすすめがあれば教えてください。

繰り返しになるが、わたしは昔からいろいろなものに偏愛があり、それらに対しては一歩も譲りたくないところがある。

自分自身はニュートラルな場所にいて、さまざまな偏愛の沼の“淵”から、フィットする言葉や物や匂いや音、そしてものの考え方といったエレメンツを採集しているイメージ。ゆえに、SNSや仕事ですれ違うだけの方には「ビジネスオタク」だと思われがちという弊害もある。

実際のところ、わが人生はマンガとアニメ(最近はNetflixなど)に支配され続けているのだが、書物や映画によって鍛え上げられた唯美主義も譲れないため「高尚なご趣味の片手間」と言われてしまうのだ。なぜオタクは美しく暮らしてはいけないのか、とくやしくなる。「片手間」は事実無根だし、とくにこの1年はアニメ誌の連載や、新しい仕事相手もきっかけで幅広い良作に出会っているので、なんとかわかりやすく真実を発信していこうと考え中。

ご質問のNetflixとイベントについては以下のとおり:

☑ Netflixオリジナル作品

『ブリジャートン家』がお好きな方にまずみてほしいのは、英国王室つながりの最高傑作『ザ・クラウン』

ファッションやインテリアにも刺激を受けつつ、知られざる英国現代史に開眼し、王室の人々の人間性を抉り出す心理ドラマに号泣する。音楽もエモーショナルで、個人的に非の打ち所がないパーフェクト・ドラマだ。扱われた事件について歴史的な補足をしたいときは、『ハウス・オブ・ウィンザー 英国王室の歩み』もおすすめ。

ファッショナブルつながりでは、断然『エミリー、パリに行く』『NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち(BOLD TYPE)』『ザ・ポリティシャン』と合わせ、社会活動とともにある現代のファッション誌を眺めているような気持ちになる。グウィネス・パルトロウはたぶん、永遠に好きだろう。

笑いたいときは『フラーハウス』。ドラマを味わいたいときには『クイーンズ・ギャンビット』『HALSTON/ホルストン』がよかった。オリジナルアニメでは『GREAT PRETENDER グレートプリテンダー』がお気に入り。外画吹替え声優が多数出演するこなれた空気感と音楽で、アニメだからこその世界旅行気分も味わえる。12月最速配信予定の『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』にはもちろん大期待。

☑ イベント

『ブリジャートン家』にちなんで紹介した展覧会「キューガーデン 英国王室が愛した花々」がこの秋、東京都庭園美術館に巡回する。

18世紀半ばの開園以来、世界の植物学研究をリードし続ける英国王立植物園「キューガーデン」の歴史を、ボタニカルアートや関連資料130点とともに紹介する展覧会。その発展に貢献した国王ジョージ3世の妃シャーロットがフィーチャーされ、彼女が愛したウェッジウッドの「クイーンズウェア」なども登場する。

最高にふさわしい舞台で、ダフネ気分を味わいたい。王妃が愛したモーツァルトのプレイリストも忘れずに。

https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/210918-1128_TheRoyalBotanicGardensKew.html

25ans CULTURE CLUB 21/04「ブリジャートン家」

男たちの英国王室

●what’s in my bag

「バッグの中身」が大好きです。また拝見できる機会を楽しみにしています。

わたしも誰かの「バッグの中身」を見るのが大好き。左上より時計回りで:

1. A. P. C. のキーリング/その昔、雑誌「Olive」でコーディネイトに憧れたパリのメゾン。青山の「リスン」と同じビルに入っているためふらりと立ち寄り、一目ぼれした。

2. Aesopのプロテクティブ ボディローション/しっとり健やかな日焼け止めローション。SPF50 PA++++

3. Jo Maloneのコロン/大定番のイングリッシュペアー&フリージア。後述の英国ミステリ『見知らぬ人』に登場し、思わず新調してしまった。アンバーとパチョリも効いていて、秋に向かうこの季節にぴったり。

4. CHANELのルージュ アリュール ラック/マスク生活の長期化で、ひさびさに投入した落ちないリップ。鮮やかな色と潤いがうれしい。

5. ウォレットとパスケースにはこの夏、シックな黒を投入。全体が引き締まり、気分が変わった。あいかわらず毎週磨く(大事)。

●favorite music

角野隼斗さんのコンサートレポ、読んでいて涙が出ました。(略)ふだんはどんなコンサートへ行かれるのですか?

わたしはいわゆるクラシックファンだけれど、昔から作曲家やコンサートホーへの偏愛が強い(なにしろ初恋の人はモーツァルト)。

ジャンルでいうなら古楽と声楽が好きだが、長年お世話になっている東京フィルのオーチャード定期新国立劇場のオペラ/バレエ(いずれもタクシー圏内)を中心に、そのときの関心次第でさまざまな演奏会へ出かける。

今シーズン(2020/21)は、ショパンとリストにまつわる執筆を続けている関係で、ピアノの演奏会へ赴くことが多かった。強烈な印象を残すのが、三浦謙司の凱旋リサイタル(5/19@Hakuju Hall)。力強いショパンと、高みへ高みへと昇っていくリストの〈ロ短調ソナタ〉が、その生涯と重なって涙が止まらなかった。どんな史料を見つけ出すことよりも、音楽は霊感を与えてくれる。

そして角野隼斗との出会いは、この1年を象徴するものの一つ。新時代への扉を開いてもらい、取材を通してたくさんの方にあたたかいメッセージもいただいた。ピアニストを取り巻く環境が激変している今、日本人とピアノ/クラシックの関係をひも解くような試みもしてみたいと考えている。

連載をつづけているコニカミノルタ プラネタリウムLive in the Darkでは、moumoonの名演が忘れがたい。どんなに難しい状況でも音楽を届けつづけるアーティストや関係者たちの思いを、これからもたくさんの人に届けたい。

Memories & Discoveries 21/02「現代のショパン」

●favourite book

愛読書はなんですか?

本好き人間にとっては悩ましいご質問だが、傍らに置いて何度も何度も読み返す座右の書という意味なら『東の海神 西の滄海』(小野不由美、新潮文庫)に決まりだ。

物語、文体、人生への影響とときめき(=延王)、すべてにおいてパーフェクト。「最高のラブストーリーを教えて」と問われて即答してしまったくらい溺愛している。『残酷な神が支配する』(萩尾望都、小学館)も同様なのだが、ここは文庫1冊で完結する小説にしておこう。

『小公女』を筆頭に影響を受けた少女小説は数多いが、時代が変わり大人になっても揺るがぬ品質は小野不由美ならでは。6月に文庫化刊行を終えた「ゴーストハント」シリーズ再読も今年の思い出の一つだ。最終巻『扉を開けて』(角川文庫)での伏線回収のカタストロフィと、麻衣(主人公が同名なのも至福)の幕切れの凛々しい孤独を愛している。

この夏の大ヒットは『見知らぬ人』(エリー・グリフィス/上條ひろみ、創元推理文庫)。ヴィクトリア朝時代の作家ホランドの旧邸宅にある学校で起こる、怪奇短編「見知らぬ人」をなぞった殺人事件。3人の女の視点から解き明かされるクライマックスに、大興奮間違いなしの傑作だ。2010年代のトレンド満載のファッションやインテリアは海外ドラマを観ているよう。

紅茶を飲んではシェイクスピアを引用する--伝統の英国描写でアガサ・クリスティを再読したくなり、手にしたのは『春にして君を離れ』(訳/中村妙子、早川書房)。友人・小橋めぐみ氏とのアフタヌーンティを思い出し、ミス・マープル・シリーズから再読してみようと考えている。

●night routine

#incenserecipeいつも楽しみにしています。先日は青山のリスンも行ってきました。もしお香以外のおすすめがあれば、ぜひ教えてください!

最後は就寝前のルーティンにちなんで、夜に愉しむ香りを。

Santa Maria NovellaのLe Candele delle Ore(時のキャンドル)は、朝昼晩、そして夜の香りが一日を彩る。最愛の「夕暮れ(Vespro)」は晩鐘の時間をイメージしていて、

トップ:ベルガモット、ローズウッド
ミドル:アイリス、ジャスミン、イランイラン、スズラン
ベース:アンバー、バニラ、ベチバー、マスク、ウッディ、サンダルウッド

と好きな香料しか入っていない。イタリアの教会やモンテヴェルディの宗教曲を思い出す、やすらぎの香り。

わたしにとって「いい香り」とは、祖母のおしろい、ヨーロッパの街角ですれ違いざまに匂い立つパウダリーな香水、アールグレイの茶葉に香るベルガモット。最近はインセンス愛が高じて、寺院の線香までいとおしい。Santa Maria Novellaの Melograno(柘榴)CLARINSのセラム コール ポー ヌーヴ プリュス白檀のお香はもはや必需品でもある。

これからの季節にはキャンドルの火がいとしくなるが、ゆらめく煙に浄化を感じるインセンスは年中の日課だ。

「ひそかに楽しみ」と声かけしてくださる方が多い#incenserecipeは、京都の友に教えてもらった松栄堂のアンテナショップ「リスン」における調香の記録。香りの世界を巡る「物語」のようなこの店のインセンスに出会ってから、朝に夕にと香りを愛する生活がはじまった。

選びぬいた香りに包まれながら、静かなぬくもりと光を見つめ、明日を生きるための火を灯す。そんな自分でありたいと願う。

あなたのなりたい自分は何だろう。これからも、たくさんのメッセージをお待ちしています。

https://odaibako.net/u/_maitakano

 

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