25ans CULTURE CLUB 21/08「ルネ・ラリック リミックス」

25ans 9月号(7/28)のテーマは「夏の終わりのチルアウト」。

庭園美術館で開催中の『ルネ・ラリック リミックス』を中心に、 フランソワ・オゾンの新作やダスティン・オハロランのピアノなど、夏の余韻の中で、ゆったりと心鎮めるセレクションをお届けした。

晩夏は、夏休みが終わっていく寂しさや、懐かしさ、不思議な安堵感が混在する文学的な季節だ。今月の映画に小説原作ものが多いのはそのせいかもしれない。『Summer of 85』のノルマンディの海も、キラキラ輝いているけどやがて夕闇が訪れる。永遠ではないところにこそ、美しさがある。

美しいものを味わった夜にはぜひ、ダスティン・オハロランのピアノ曲を。自分を見つめて、十分に休息をとったら、また新しい季節へ。チルアウトの時間、大切に楽しみたい。


Focus

『ルネ・ラリック リミックス
時代の インスピレーションを もとめて』

暮らすように味わう、ガラスの展覧会

光あふれる旧朝香宮邸の広間に、浮遊するように展示されたブローチ《シルフィード》。

ガラス製品で知られるラリックの希少なジュエリーに、昔日の貴族たちを思う展覧会を訪れた。

シャンパーニュ地方の小さな村に生まれたラリックにとって、「自然」は身近な存在だった。自然を注意深く観察することによって培われた眼差しは、20世紀初頭のフラやがてンスに起ったさまざまな芸術潮流と結びつきながら磨かれ、やがて「ガラス工芸」という芸術を生み出す。

彼の活躍と同時代に建てられ、ラリックのガラスレリーフ扉でも知られる旧朝香宮邸(東京都庭園美術館)は、在りし日と変わらず静謐な、アール・デコの聖域だ。

庭園美術館に行くことは、「美術館へ行く」というよりも「朝香宮邸を訪ねる」と言ってみたほうが実感に近い

音楽も調度も、生活の中で息づいてこそ。訪れるたびに、ほんとうのエレガンスを教えてくれる。9/5まで。

https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/210626-0905_ReneLaliqueRemix.html


line up

【本】リボルバー/ヨガの絵本/花歌舞伎徒然草【音楽】ダスティン・オハロラン/小林愛実【美術】ルネ・ラリック リミックス/三菱の至宝/浮世絵風景画【映画】Summer of 85/ドライブ・マイ・カー/モロッコ、彼女たちの朝【舞台】ドラキュラ 他

『Summer of 85』

フランソワ・オゾンの「原点」となった
少年同士のひと夏の恋

名匠オゾン監督が、10代で出会い影響を受けた小説を映画化。少年たちの人生を変えたひと夏の恋を、鮮やかに描き上げた。なにより美しいのは、二人の友情が恋愛へ変わっていくときの感情のあわい。永遠の別れを経て、生きる希望を失ったアレックスを突き動かす、交わした誓いのリフレインも見事。あの頃のように純粋に、思い切り誰かを愛したい。愛する人がいる幸せをかみしめたい。さまざまな感情が去来する、サマームービー。

https://summer85.jp/

『ドライブ・マイ・カー』

静謐な空気に映える
赤い車と、鮮やかな感情

村上春樹『女のいない男たち』に収録された短編小説の映画化。舞台俳優で演出家の家福悠介(西島秀俊)は、脚本家の妻と幸せに暮らしていたが、妻は秘密を残したまま他界。2年後、喪失感を抱えながら生きていた家福は、演劇祭のため愛車で広島へ向かう。そして専属ドライバーのみさき(三浦透子)と過ごすうち、目を背けていたあることに気づく--。静謐なリズムの中、時折顔を出す生々しい感情に引きこまれる、濱口竜介マジック。圧巻のラストまで目が離せない。

https://dmc.bitters.co.jp/

『モロッコ、彼女たちの朝』

異国情緒あふれる街を包む
色と光、そして希望

カサブランカの街で、女手ひとつでパン屋を営むアブラと、未婚の妊婦サミア。思いがけなく出逢った二人は、互いの孤独に寄り添い、人生にもう一度光をもたらしていく。監督の実体験を基にした親密なストーリーはもちろんのこと、パン作りを通して心を通わせていく女性たちを包むエキゾティックな色彩と光が、第三の主役のように魅力的。モロッコの焼き菓子やアラビア音楽などの異国情緒も満載で、ひと時の旅情を味わえるはず。

https://longride.jp/morocco-asa/

(25ans 9月号より加筆修正中)

連載|25ans CULTURE CLUB

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