夏の終わりがやってきた。
誕生日を迎える乙女座の季節は、なにかが終わってはじまるような、永遠にいとしい季節。過ぎゆく夏と戯れるように、2020年の前半を振り返る。
●WHAT’S IN MY BAG
新しいホームページを公開して1ヶ月。
雑誌掲載作品やラジオ番組のアーカイブ・プロジェクトも始動し、10年間の愛と情熱の遍歴を振り返る日々だ。それは同時に、なかなか可視化できない自分の変化や進化を確認する作業でもあり、歓びを感じずにはいられない。もちろん、たくさんの読者に訪れていただいていることにも。
感謝をこめて、ひっそり設置していた「お題箱」へのリクエストより、今回は「カバンの中身」をご紹介。
左上より時計回り:
1. Diptyqueのオードトワレ「OLENE」/わが香水コンセルジュ小林奈那子が「ヴェネツィアの庭にいる伯爵夫人のイメージ」と選んでくれた愛用品。時折ハニーサックル、夕方にはウィステリアとジャスミンの甘い香りが漂う。
2. マーガレットのイヤリング/母のおさがり。冒頭写真で着用。
3. 折畳傘とMONOPRIXのエコバック/最高に役立っている友人Yのパリ土産。モノトーンの水玉模様は永遠に好き。
4. Les Merveilleuses LADUREEのコンパクトとD.R.HARRISのリップバーム/マスク生活でも高確率で持ち歩く2点。今夏限定のアイカラーは、コスメ仲間でもある小橋めぐみからのプレゼント。ラデュレは香りが好き。
5. KATE SPADEのウォレットとパスケース/シックなベージュとミントブルーが定番。週一で磨く。
●LISN
毎月の#incenserecipeでご紹介している「lisn」のインセンス。
lisnは京都の四条烏丸と青山にある、香老舗・松栄堂のアンテナショップ。通いつめている青山店は、私にとって自分を「整える」ための大切な場所となっている。
8月は、CLUB LISNのスペシャル・コンテンツ「Select For You」をはじめて試み、お世話になっているコンセルジュが、カウンセリングやこれまでの印象をもとに選んでくれた「私の香り」をご紹介した。
好きな季節は「夏のおわり」、好きな言葉は「自由」――。自分を見つめ直すカウンセリング自体も満ち足りた時間だったが、後日届いた10種のインセンスに添えられた手書きの手紙には、泣き出してしまうほど感動した。「ある女性の朝・昼・夜の香り」として構成されたlisnの最初の3つの香りとイメージを重ねてくださったことはもちろん、なにより心に響いたのが、#290 AMULETのコメントとして添えられたイメージストーリー。
道なき道 色のない世界に描かれた道
前にも後ろにも 右にも左にも
進みたい方向にのびていく
山を越えて 時を超えて 自由に旅する私
あまりに「今」に響く物語。思わぬところで勇気をもらうタイミング、というのはあるものだ。
●BALCONY
3月半ばにはじまった家生活で、もっとも劇的に変化したのがバルコニー。
白いタイルを敷いて壁を磨き、いくつかのグリーンと籐の椅子を置いただけだが、洗濯ものを干すだけだった空間が、いまや第二のリビングに。この時期の夜風がこんなに心地いいことも、月光浴に力をもらえることもはじめて知った。
●MADE IN ITALIA
もともと家を愛し、独立して10年間ずっとSOHO生活のため、仕事環境は整っているわが家。しかし、今年ほど食材や暮らしまわりに投資したことはない。
6月のナポリへの短期留学がとん挫した分、プーリア州の農場からオリーブオイルを取り寄せたり、サンタ・マリア・ノヴェッラのポプリでフィレンツェの丘を感じたり、シチリアのオレンジ香る石鹸で手を洗ったりと旅気分を楽しんでいる。もちろん下着や部屋着はIntimissimi。
TORREGRANDEのオリーブオイルは、プーリア在住のオーガニック農家・足立友里恵さんの農場のもの。はじめての海外お取り寄せに親切に対応してくださり、到着したときにはいとしいイタリアの匂いを感じた気さえした。以来、パスタはもちろん、サラダにヨーグルトにと活用中。新鮮なオイルがこれほど味わい深いことをはじめて知った。
おまけの右端は、英国産のエルダーフラワー コーディアル。炭酸水にちょっぴりたらすと美味。
●TRAVELING IN OPERA
もうひとつの”仮想イタリア旅行”はオペラ。
ニューヨーク、メトロポリタン・オペラ(MET)をスクリーンで楽しむMETライブビューイングが、恒例のアンコール上映を開催中だ。今年のテーマは「この夏、オペラで世界を旅しよう」。『トゥーランドット』の中国、『カルメン』のスペイン、『椿姫』のパリなど、オペラの舞台を通して旅気分を味わう好企画となっている。最新2019/20シーズンからは、エジプトを舞台にした『アクナーテン』(上演終了)とローマを舞台にした『アグリッピナ』(8/30-9/4)、そしてアメリカが誇る『ポーギーとベス』(9/21-28)も必見だ。
ヘンデル『アグリッピーナ』は、古代の歴史劇を”ローマ帝国が続いている世界線の現代”に置きかえた最新オペラ。gossip girl的ゴージャスな舞台でダンサブルに生まれ変わったバロック・オペラが好みのど真ん中だった。
権力欲と愛憎の普遍性よ。痛快ピカレスク、すべての人に見てほしい!
https://www.shochiku.co.jp/met/news/2908/
●READING HAMMOCK
どんな船よりもさまざまな異国へ
わたしたちを運んでくれる書物 -エミリ・ディキンスン
家生活の最たる効能は、読書時間の拡充だった。
昨冬から積んだままだった『十二国記』最新4巻一気読みをきっかけに、既刊15巻と『屍鬼』、『ゴーストハント』など小野不由美作品をすべて読み返した春。いきおい、夏季休暇には『銀河英雄伝説』全10巻+外伝5巻を一気読み。こうなったら今年中に三島由紀夫『豊饒の海』全4巻やプルースト、『源氏物語』なども再読したいのだが、実家にあるのはすべて函入りの大判なので買い直そうか思案中。
寝食を忘れて小説を読みふける、という幸福をこんなにも味わったことは、大学卒業後ひさしくなかった。ディキンソンの言葉はまさに正鵠を射ている。本さえあれば、心は宇宙空間まで飛んでいけるのだ。
『銀河英雄伝説』については、9月にスタートする新連載でも綴っているのでお楽しみに。
●SOUND OF WAVES
寄せては返す波というのは本当に不思議だ。この静かな空気、透明な空気のどこにこれだけの動きを引き起こすエネルギーが隠れているというのだろう。目に見えぬものが世界を動かしているという事実を、なぜ潮の干満や波に限って信じることができるのだろう。 -恩田陸「象と耳鳴り」
自粛が明け休日を海辺で過ごしたとき、「私は海に入りたかったのではなく、この潮騒を聴きたかったのだ」と痛感した。
あるいは潮風を感じ、たゆたう碧を見ているだけでいい。水辺を再現するのは難しいが、音ならば。ステレオさえあればと試してみると、驚くほどの「海辺」。波の音には旋律がないので執筆の邪魔にもならないし、気分は村上春樹である(※イメージ)。
晴れた朝には、湘南生まれの Michael Kanekoのアルバムを聴く。朝のバロック、月夜にはドビュッシーやサティと、定番もいとおしい日々。
音や匂い、部屋に差す陽光の色や、移ろう季節。家生活は、たくさんの発見を与えてくれる。
美しいすべては癒しだ。あとは旅さえできれば、私の人生は完璧なんじゃないかとすら思う。
[関連記事]