ラ・フォル・ジュルネ新潟2017「ラ・ダンス」が閉幕。やはりあっというまの3日間!
今年も家族を「0歳からのコンサート」へご招待。昨年コンサートデビューした1歳半の姪とともに、井上道義 指揮シンフォニア・ヴァルソヴィアによるフィリップ・グラス&ブラームス&ドヴォルザークのプログラムを楽しんだ【211】。
もちろん、新潟名物のお弁当でピクニックも。晴天が続いてよかった。りゅーとぴあの楽園の雰囲気は、なによりこの緑の美しさにつきるから。
毎年楽しみにしているカラフルなチューリップの花が、今年は館内にもたくさん飾られて、カラフルなリズムを盛り上げる。恒例の「花あそび」のほか、夕方にはいただいて帰ることもできたので、姪も母も大はしゃぎだった。
今年の「ラ・ダンス」というテーマ、とくにラテン・ミュージックが目立つ新潟のプログラムが意外に好評だったようで、今年はオープニングセレモニーからたくさんの人が集まった*1。
オープニングアクトはユリアンナ・アヴデーエワ(左)によるショパン。2010年のショパン・コンクールの覇者である彼女の人気は、地方のピアノキッズのあいだでも根強い。パンツ姿の「ユリアンナ・スタイル」で颯爽と登場し、熱情をこめて、ときに洒脱にグリーグのピアノ協奏曲【213】を披露したときも、ときめいた空気が会場を埋め尽くした。
かつてダンサーを志していた指揮者の井上道義さん(右)にとって、「ラ・ダンス」とはもうひとつの魂そのもの。りゅーとぴあが誇るコンサートホール [ニジンスキー] で、前述【211】では「うたのおにいさん」のごとき卓越したMCぶり、マルケス「ダンソン第2番」やバーンスタイン「ウエストサイド物語」を指揮した【312】では、まさにダンスのような躍動感と色気漂う指揮を披露した。
2005年、東京ではじめてのラ・フォル・ジュルネが開催されたとき、フランス語のおしゃれなポスターに惹かれた私が真っ先に購入したのは、道義さんが指揮した「第九」のチケットだった。歓喜の歌が鳴りやみ、最高潮の客席に向かって彼が叫んだ「大成功!」ということばが、私の人生を変えてしまった。感謝してもしきれない、恩人の一人だ。*2
もうひとり、うれしい再会が。フランスの気鋭のハープ奏者、シルヴァン・ブラッセルである。
シルヴァンは新潟初登場。新潟会場の特徴のひとつである「和風建築」の舞台の一つ、能楽堂 [パヴロワ] で、ドビュッシーの「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」ほか、幽玄なるフランス音楽を披露した。共演のプソフォス四重奏団との信頼関係もすばらしかった【322】。
シルヴァンは2015年、東京初登場。OTTAVAのオープンスタジオにゲスト出演してくれたばかりか、その演奏で私に強烈な「パシオン」を与えてくれた音楽家だ。
昨日のインタビューでジェントルな人柄にほれ込んでいたので、すばらしい時間になるに違いないと確信はしていたのだが……
すばらしいどころの話ではなかった!
こんなに酩酊し、恋のような熱病にかかってしまうとは!
テーマは「恋の物語~ハープで聴く400年の愛と死」。バロック音楽もバッハもハイドンもすばらしく、MCも優雅でうっとりしたのですが、リストの「コンソレーション第3番」がハープの音色で流れ出した瞬間、涙が止まらなくなった。
ショパンの死の翌日、かつての盟友への思いを音楽に託したリスト。その音につまったやさしい悲しみが、まるでモノクロームがカラーに変わるようにあざやかに浮かび上がり、広瀬悦子さんも言っていた「複雑で魅力的なリスト」がいとおしいのと、ハープがいとおしいのと、シルヴァンさんがいとおしいのと、さまざまな愛が重なりあって私は思った。
「私はリストに、ハープに導かれている」
これはまさに運命。
2年前の情熱はすこしも色あせていない。東京では、同プログラムのほかバッハの「ゴルトベルク変奏曲」を披露する予定だ(※予定枚数終了)。
そして今年のもうひとつの喜びは、敬愛なる西山まりえさん(ハープ)とその盟友コリーナ・マルティ(リコーダー)が、新潟へきてくれたこと!
会場は、能楽堂と並んで人気の和風建築・燕喜館 [カニンガム]。自分のイベントとかぶってしまったため本番に伺うことはかなわなかったが、コリーナさん自ら撮影したお写真がすばらしすぎるのでご紹介したい。
仲良しのおふたり。また来年もその次も、ここで演奏してほしい!©Colina Marti
私自身は去年につづき、トークイベント「テアトルラウンジ Supported by FM PORT」に出演させていただいた。
写真は人気パーソナリティ遠藤麻理さん(左)と、通訳として登場したにもかかわらず『春の祭典』のダンスまで披露してくれた新井翔さん。
ゲストには、新潟出身ハママツ在住「好きなものはギョーザー」でも話題のチェリスト横坂源さん、井上道義さん、テンベンベのレオポルド・ノボアさん(写真)、
新潟市ジュニア邦楽合奏団のメンバー、新潟市ジュニアオーケストラのメンバー、大活躍だった指揮者ディナ・ジルベールさん、そしてルネ・マルタンが2回も来てくれた。ルネが、「呈茶」や「新潟ワインコースト」などの新しい取り組みを喜び、ナントの「姉妹都市・新潟」について上機嫌で話してくれたこともうれしかった。
今年もFM PORTのおふたりやスタッフの皆さん、そしてたくさんのお客様のおかげで、より一層身近に故郷を感じることができたわけだが、たとえば帰りのタクシーの中で、ラ・フォル・ジュルネを楽しみにしているという運転手さんと、「ナントはフランスのどのあたりか?」「新潟と似ているのか?」なんていう話に花が咲くようになったのもうれしい。父と参加した初日のコンサートでは、会場周辺にあったかつての花街・古町の芸者さんの踊りをはじめて見たり、村上出身の父の同級生のご家族にばったりお会いしたりもした。
東京からいらっしゃっていたジャーナリストの片桐卓也さんやフォル・ジュルネ・ファンの女性たちが、ワイナリーツアーを絶賛していたのもうらやましく、故郷を誇りに思えた。
新潟の人は、一見おとなしそうに見えて、心の奥底はけっこうラテンなのだ。
「新潟=お米」のイメージしかない人には意外かもしれないけれど、この街はもともと横浜と同時期に開港した港町であり、日本ではじめてのイタリア料理店が作られた街であり、坂口安吾や吉屋信子を生んだ文化都市であることを誇りにしている。東京はもちろん、フランスやイタリアの文化に憧れる力が、その発展を支えてきたのではないだろうか。土地の人と親しくなればなるほど、その確信は深まっていく。
そういう側面を、私はもっとアピールしたい。思いを一年一年、大切に積み重ねている。
色とりどりのリズムをのせて、楽園の日々は東京へ。
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