城下町の庭|春の庭百景めぐり(新潟県村上市)

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ラ・フォル・ジュルネ新潟、閉幕から1日。

東京開幕までの数日、故郷にとどまり家族と5月の晴天を愉しんだ。

「城下町村上・春の庭百景めぐり」は、毎年5月のひと月、春の喜びに満ちた村上の町屋や寺、武家地区を巡り、それぞれが丹精込めて整えた庭園や盆栽を訪ねるイベント。一昨年の3月、祖母と訪れた「人形さま巡り」の庭園版である。

【Travel】城下町の春 | 町屋の人形さま巡り(新潟県村上市) – Salonette

 

今回は両親と妹、1歳の姪が一緒。まずはわたしたち姉妹も子ども時代にたくさん遊びにきた「お城山」こと、臥牛山のふもとでピクニックを。

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すずらんが咲いていてびっくり。桜の名所ととして有名になったためか、ふもとの公園まで整備されていたのも驚いた。

村上城は、16世紀前半には築城されていたといわれる本庄氏の本拠地。1568年(永禄11年)には、上杉謙信との篭城戦も繰り広げられたと伝わる。江戸時代には、村上氏・堀氏・松平氏・内藤氏ら城主によって城の改造と城下町の建設が行われ、北越後の中心拠点として整備された。

現在、天守や門などの城郭建造物は存在しない。城跡一帯には、戦国時代に築かれた堀などの遺構と、江戸時代に築かれた石垣の遺構が混在して残っていて、国史跡に指定されている。ふもとから山頂までは徒歩約20分で、小鳥のさえずりと豊かな緑に包まれた城跡は、どちらかといえば人々の憩いの場という趣だ。

公園に程近い岸家は、前庭のツツジの垣根で有名。とても見事だった。

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腹ごなしをながら、羽黒町を通って冨士美園へ。大人気のソフトクリーム(抹茶味・雪国紅茶味)をいただきながら、天井の高い「町屋造り」の一室で中庭を拝見した。

冨士美園 | 越後村上・北限の茶処 | 六代 飯島剛志の雪国紅茶

 

「町屋造り」とは、職住一体型の建築様式。用地が限られ、間口の面積が制限された都市部に多く見られた様式で、格子窓など趣ある外観のほか、奥行きの深い構造も特徴的。

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名産の村上堆朱の茶器もしっかりアピールしている。冨士美園の村上茶は、やさしくてほっとする味。上越新幹線の車内で販売されているのも、この茶園のオリジナル・ペットボトルだ。

近隣では乙女椿も満開。

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鮭の町でもある村上。この吊るされた鮭は、故郷の見慣れた風景だ。自宅の裏庭の軒先でも、こうして吊るされていることがあり、子どものころは怖かった。秋にとれた鮭を1年もの間寝かせ、徐々に発酵させていくことで「塩引き鮭」が作られる。

松尾芭蕉ゆかりの井筒屋の中庭ものぞき、寺町の安善小路へ。やはり一昨年、両親の還暦をお祝いした料亭「新多久」の前庭は、一本奥まっただけでとても静か。

還暦祝い@割烹 新多久(新潟県村上市)|エレ女のクラシック|25ansオンライン

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周辺は黒塀通りと呼ばれる。村上の旧町人町の象徴でもあった「黒塀」を再現し、昔の景観に「修景」する黒塀プロジェクトがいまも進行中。

ティファニー財団など、内外の様々な団体からも表彰された、故郷の誇りだ。

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黒塀に映える赤い花。こちらの中庭は、あこがれの「秘密の花園」のような静けさと、不思議に落ちつく穏やかな美しさに満ちていた。

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こんなテーブルで午後の紅茶ができたら、最高ね。

そろそろお昼寝の時間も近づいてきたようで、最後に「味匠喜っ川」さんへ。

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中庭を覗いて、冷えた甘酒をいただいて、お土産も選んで帰路についた。

 

北国の春。5月という素晴らしい季節に輝く木々や草花、華やいだ町、吹き抜ける薫風――町のために、町の人々が自ら丹精した庭を訪ねるというこのイベントは、私にとってはとても英国的で、洗練された行為だと感じられた。

京都などの一部を除いて、日本の都市に暮らしていると景観への無関心さに悲しくなることが多いものだが、故郷が美意識において先進していることが誇らしい。次回は、お寺や神社の大きな庭園も観てみたいと思う。

また、こうして町屋を巡ってみて毎回感じるのは、「もっと郷土史を知りたい」ということ。戦災や自然災害に見舞われることのなかった村上には、貴重な文化財が数多く残っている。それをきちんと知りたいし、より広い人々にも伝えたい。

いつか形にできる日に備えて、少しずつ学び続けたいと思っている。

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町屋と人形さまの町おこし

町屋と人形さまの町おこし

 

 

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