クリスマスが近づく、幸福な季節。
アドヴェントカレンダーも半分以上の窓が開き、いよいよ気分が高まる。
アドヴェントは「待降節」と訳され、クリスマス前の4週間あまりの期間――11月30日に最も近い日曜日(今年は12月2日)から始まり、4回の日曜日を経て、 12月25日に至る期間を指す。
語源は「来たるべき」という意味のラテン語adventus。
キリスト降臨の約束とそれへの期待を表わし、4本の蝋燭を立てた円形の「アドヴェント・クランツ」に、日曜日の礼拝ごとに1本ずつ火を灯す。
すべての蝋燭が灯ると、待ちに待った「クリスマス」。
この間、街にはクリスマス市が立ち、家庭ではお菓子を焼く。
子どもたちはアドヴェントカレンダーをめくる。(私もめくる。)
日が短くて寒い冬、一年で一番忙しく、楽しい季節の到来だ。
■ドイツのクリスマス市
ドイツでは、どんなに小さな町や村へ行っても、教会や市役所の前の広場でクリスマス市が開かれている。
最大にして最古のクリスマス市が立つニュルンベルクでは、アドヴェントの初日、大聖堂のバルコニーに「クリストキント(幼子イエス)」に扮した少女が現われ、クリスマス市の「開会宣言」をするのだそうだ。
ドイツの子どもたちにクリスマスのプレゼントを持ってきてくれるのは、サンタクロースではなく、この「クリストキント」。
イヴの晩、生まれたばかりの無垢なイエスが、プレゼントを持ってきてくれる…なんてステキ。
クリスマス市は、別名「クリストキンドル・マーケット」とも言う。
日本の縁日に並ぶ露店、酉の市に近い感覚かもしれないが、とにかく華やか。
大都市では、観覧車やメリーゴーランドまで併設されていて、まるで遊園地のようだという。
舞台で、毎日のように聖歌隊の演奏やコンサートが催されるところもある。
買い物お供にはチョコレートがけの林檎、ソーセージ、そしてマーケットならではの「グリューワイン」。
これは、温めた赤ワインにオレンジピールやチョウジなどの香辛料と砂糖を入れて飲む。
■クレシュ
さて、カトリックの国フランスでは、クレシュと呼ばれるキリスト降誕の馬小屋(プレゼピオ)の場面をかたどる人形が、各地の教会で飾られる。
何年経っても変わらない教会もあれば、毎年飾り付けが変わる教会もある。
サンジェルマン・デ・プレ教会は、人形の衣装が毎年変わる。
また、人形こそ変わらないけれど背景が変わる教会などもある。
12月24日の深夜ミサの時、それぞれのクレシュには幼子イエスが加わる。
そして、「エピファニー(公現祭)」の1月6日に、東方の三博士たちが加えられる。
こののち、数日でクレシュは片付けられるのである。
……こうして私たちの季節は、一気に「迎春」へと早がわりするのだ。