今年もロシア大会より、グランプリシリーズ(GPS)2017開幕!
ということで、本日発売のスケート・クラシックBEST『クラシカロイド・オン・アイス』にて、スケート音楽の歴史と曲目解説を執筆いたしました。
ジャケットは、イケ度2割増しのベートーヴェンとモーツァルト。公式さま、
銀盤を彩る音楽を網羅した「クラシカロイド」とフィギュアスケート・ラヴァーのための スケート・クラシックBEST!!
本気の選曲です…。
となぜか恐縮気味ですが、いやいやいや、いつもながら本気の選曲です!!!
じつはクラシック業界にとって、スケート音楽アルバムって、毎年リリースされる季節定番なんですよね。2006年トリノ五輪での「トゥーランドット」が象徴するように、クラシックがあそこまでお茶の間に浸透する機会って、フィギュアをおいてほかにありません。
ところが、フィギュアスケートでの楽曲使用って、ものすごく流動的。選手のメンタルやコンディションで直前変更なんてざらだし、アレンジ(編集)しまくりだし、出版や放送では要注意の「使用許可」といったシステムはないのだそう。だから、なんと音楽に関しては、各選手の詳細データは残っていないのです!(びっくり!)
アルバム制作陣がどうやって選曲するかというと、
- アサイン発表からニュースをつぶさにチェックし、音楽情報を集める
- GPSをはじめとする試合をリアルタイムでチェックする(真夜中)
- 音源が自社のものと推察されたときは裏をとる(他社の場合は同曲を探す)
といった地道な作業を重ねるわけです!
今回はGPSスタートと同時発売。「クラシカロイド」をテーマにした「クラシックBEST」という側面もあり、予想の要素は薄かったのですが、かわりにこの30年のフィギュアの名シーンをたどるため、音楽について言及のある記事から選手たちのエッセイ、動画まで、私自身も地道な悉皆調査を重ねました。
Disc1は歴代のフィギュアスケーターたちが使用した名曲集。たとえば「トゥーランドット」や「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番」、「カルミナ・ブラーナ」といった人気曲ばかり。
そしてDisc2は、「クラシカロイド」登場の作曲家たちによるスケート名曲集。ロシア大会でも使用されたベトの《ピアノ・ソナタ第14番「月光」》やチョッちゃんの《バラード第1番》。スケーターたちの最新人気曲であるリッちゃんの《死の舞踏》から、モツの《レクイエム》まで。さらに新クラシカロイド、ドヴォルザークから《ユーモレスク》もアサイン。「こんな曲も使われたんだ!」という、発見と驚きが満載でした。
クラシカロイドはNHK Eテレで土曜5時放送中の「教育アニメ」ですが、監督(現監修)藤田陽一とゆかいなスタッフたちにより、素晴らしい銀魂感というか、おそ松感を醸し出しているのが特徴です。今回も、
「人気スケートアニメにのっかったわけじゃないよ😋」
というノリがアニメファンにも伝わっていて、会う人会う人に「混乱しました」と褒められる楽しいお仕事でした。
執筆中、最も感動したのが、スケーターと音楽の密接なつながりについて。前述の人気スケートアニメのなかで、選手が以下のようなモノローグをつぶやくのを思い出し、書き終えた時には胸がいっぱいになりました。
脱稿。フィギュアスケートの歴史に思いを馳せながら、レオ・デ・ラ・イグレシアの言葉を思い出している。
「音楽に出会っていなければ、一体どうやってこの魂を勇気づけることができただろう」 pic.twitter.com/n5fkbYttkv
— 高野麻衣 (@_maitakano) 2017年9月10日
彼の使用曲は、次のような歌詞でした。
「朝日にも、月のない夜にも、神を感じるたび大丈夫だと思えるんだ。
あらゆるものは音楽を宿している。
音楽なしにどこへ進み、何をして、何になればいい?」
この歌詞にふいに、泣きたくなることがあります。音楽という、信じるものがあってよかったと。
いろんなジャンルのファンに、たくさん、手にとっていただけますように。
- アーティスト: オムニバス(クラシック),リスボン・グルベンキアン財団合唱団,ミシェル・コルボ,リスボン・グルベンキアン財団管弦楽団,ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団,モーツァルト,グノー,プッチーニ
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2017/10/25
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