わたしの「クリスマス・キス」

こんばんは、高野麻衣です。すっかり寒くなりましたが、いかがお過ごしですか?こちらは新刊の告知もはじまり、浮き立つような日々を過ごしています。年の瀬のあわただしさも感じますが、12月のこの季節って基本的に、幸福感に満ちたホリデイですものね。

わたしは小さな頃から、西洋の物語とその土台であるキリスト教会に夢中でした。とりわけクリスマスについての本を読んだり、映画を観たりして、その文化や由来を知ることがいまでも大好きです。

『小公女』のセーラが屋根裏部屋にしつらえてもらったごちそうにある、クリスマス・プディングってなに?
『若草物語』の四姉妹が声を合わせるキャロルは、何番の賛美歌?
『あしながおじさん』のジュディみたいにクリスマス・プレゼントのリストを作るなら、何をならべる?

豊かな時代だったから、さまざまなメーカーがアンティークのイラスト付のカードやオーナメントを、しっかりした読み物とともに与えてくれました。テレビ局ですら、文化的でロマンティックな番組をずっと流していた気がします。冬休みの最初の日でもある、クリスマスの朝の幸福感といったら!

やがて成長してからも、コバルト文庫や角野栄子のエッセー、萩尾望都のマンガなどを通して、あこがれは増していく一方でした。いわゆる”乙女心のインテリ欲”です。

今年もアドベントのはじまりには、銀座・教文館のクリスマス市へ行きました。絵本専門店「ナルニア国」では、新しい定番になりそうな、美しい切り絵の本に出会いました。

クリスマス・イヴには母校のそばにあるイグナチオ教会へ行ってお祈りをしたい、そんな気分です。

 

教会では、11月30日の「聖アンデレの日」からクリスマスの準備をはじめます。

この日に一番近い日曜日から一週間に一本ずつ、蝋燭に火をともしていく--この待降節の行事が、いわゆるアドベント・カレンダーのはじまりなんですって。

1週目はやさしい心を持つことができるように。 2週目は丈夫な心を持つことができるように。 3週目は忍耐強い心を持つことができるように。 4週目はお祈りする心ができるように、蝋燭に火をともす。

わたしはこれを、コバルト文庫の人気作家だった藤本ひとみ先生のイメージアルバム『クリスマス・キス』で知りました。

アルバムのなかには、小説に出てくる人気キャラクターが「好きな聖書のことばを朗読する」コーナーがあって、わたしは大好きなシャルル・ドゥ・アルディの読みあげる「ローマ人への手紙 第12章(愛には偽りがあってはならない)」をまったく当然のことのように暗誦していました。ラルク・アン・シエルに夢中だった友人もまた「Hydeさんの歌詞の世界観を知りたくて」聖書を読んでいたそうで、わたしはそこに限りないシンパシーを感じています。

花園magazineをはじめるとき念頭にあったのは、こうした愛からはじまる知への旅を、わたしたちの手で復活させたいという思いでした。そしてこれが、わたしのクリスマスの祈りです。

いま、ひとみ先生自身がおきにいりとして紹介していた「ヨハネの第一の手紙 第4章」がいちばん心に染み入るのは、そのせいなのかもしれません。

神を見た者は まだひとりもいない
だが もしわたしたちが互いに愛し合うなら 神はわたしたちのうちにいる

 

MY FAVORITE ADVENT

-「若草物語」 /バレエ「くるみわり人形」 /マリアージュ・フレールの「ノエル」
わたしのクリスマス3大定番。「若草物語」の映画は、若き日のキキやクリスチャン・ベールも登場する1993年のジリアン・アームストロング監督版がいちばんすき。

– べノアの「ダージリン・アールグレイ」/ウォーカーの「クリスマス・プディング」
今年のハマリものおやつ。スパイスのきいた冬の英国紅茶と、あこがれのケーキ。

– パメラ・ドルトン「クリスマスものがたり」
今年出会ったすばらしい絵本。ウィリアム・モリス風のイマジネーション。

– エインカレムの「クリスマス・カード」
クリスマスのカードやオーナメントは、赤いものよりも、白と金を基調にしたものが好き。聖具店であるエインカレムは、清楚な色合いの宝庫。

 

みなさんのホリデイが、すてきなものになりますように!

(花園magazine 初出)

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