The Princess Year 2013~姫キャラでごめんあそばせ

あけましておめでとうございます。高野麻衣です。

昨年は、新刊『マンガと音楽の甘い関係』の執筆やたくさんの出会いを通して、自分の核を見つめなおす一年になりました。

とりわけ壮大なプロジェクトになりそうなのがこの、花園magazine。ずっとやりたかった「雑誌」をはじめるにあたって、少しずつカラーの違うふたりのガールズとユニットを組めたことは、最高の幸運でした。秋の文学フリマで発行した紙版『花園magazine vol.1』は驚くほどの短期間で完売し、増刷分も好評発売中。感謝でいっぱいです。期待に胸躍る新年もどうぞ、花園magazineをよろしくお願いいたします。

さて、2013年。 わたしのテーマは「姫キャラの解放」です。

英国王室、後白河法皇、木村拓哉にタカラヅカ、そしてマリー・アントワネット――あらゆる王的なもの、雅なるものに耽溺しつづけた一年を経て、ノブレス・オブリージュな姫キャラへのあこがれで、胸がいっぱいなのです。

■姫キャラ・リヴァイヴァル

ことのおこりは、やはり花園会。 ある日の編集会議の帰り道、立ち寄ったコンビニでディズニーコラボ・コスメを目にしたガーリエンヌちゃんがひとこと、「わたしはデイジーがいちばんすき!」 と叫んだのです。はっとしました。なぜならわたしは、 「女の子はミニー・マウスがお好き」 と信じてうたがわない人生を歩んできたから。

ミニーとはすなわちキング(ミッキー)の恋人で、みんなのマドンナでもある、アニメのヒロイン役です。シンボルはリボンやお花。イメージカラーはピンク。すきなものはお菓子作りにショッピング、そして音楽。負けん気は強いけれど愛嬌たっぷりで、口癖は「Aren’t you sweet!」。まるでマリー・アントワネットのような姫キャラが、ごく自然なわたしのあこがれでした。だからこそさまざまな読書と平行して、「JJ」や「Cancam」を愛しつづけてきたのだと思います。

もちろん、頭ではわかっているのです。 ”ミニーではない”女の子はたくさんいるし、自分自身のなかにも”ミニーではない”部分がたくさんある。 それは当然のことです。ひとはだれも、一面だけでは語れないのだから。問題は、現在の文化系界隈のおきにいりと、女の子のミーハーなキラキラのあいだに大きな断絶があることです。

読者さんからいただいた、一通のメールが心に残っています。「どうしてわたしはキラキラをあきらめてしまったんだろう」 ――あまりにも真摯で、涙がこみあげました。わたしにも少しだけ、「キムタクがすき」「スイーツや恋バナがすき」と言うのが罪なのではないかと思い込んでいた時期があったからです。それは、とても違和感だらけで、息苦しい枷でした。

でもいまは違います。わたしはスイーツであり、オタクでもあります。

こうして花園magazineをつづけることで「考え方が違うことは楽しい」と確信し、「どちらもわたしである」と主張できるようになりました。両極端なあこがれこそが私自身であると、いま、心から思えるのです。

新しい年に誓います。 わたしはもう、姫キャラを隠さない。 そしてミーハーと硬派のあいだで揺れるたくさんのマージナル・ガールに、花園magazineを捧げます。

 

■極私的姫キャラ・リスト

 

ポンパドゥール夫人 Madame de Pompadour

しなやかに、したたかに。断頭台に消えたアントワネット以上に現実的にあこがれている、もうひとりのアントワネット。ルイ15世の寵妃で、9歳で「王に愛される女になる」と思い定め、「王妃ちゃん」と呼ばれていたという意思のひと。百科全書の時代の知性のパトロンだった彼女のこと、もっと研究したい。

かの名はポンパドール

かの名はポンパドール

キャサリン妃 Catherine, Duchess of Cambridge

現代を生きるプリンセス。やはり「王妃になる」という目的のために美貌と知性を磨き、学友であるウィリアム王子の目に入るように常に心を配ったという逸話はあまりに有名。偉大なる女王陛下、そして亡き義母の影はあまりに大きいが、今後の活躍にじゅうぶん期待。

キャサリン妃コーデのすべて (e-MOOK)

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ブレア・ウォルドーフ(「GOSSIP GIRL」) Blair Waldorf 

典型的アップタウン・ガールにして学業優秀な学園の女王様。すべてに恵まれたように見えながら、親友セリーナの太陽のような華に劣等感をいだく孤独なプリンセス。『ガラスの仮面』の亜弓さんタイプの陰影と、「女の子の好きなものぜんぶでできている」暮らしぶりが圧倒的な魅力をはなちます。

GOSSIP GIRL―Blake Lively×Leighton Meester PERFECT STYLE OF GOSSIP GIRL (MARBLE BOOKS Love Fashionista)

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夢咲ねね Nene Yumesaki

絶対的な男(役)上位の世界において、唯一キングのそば近くに寄り添うことを許される存在。それが宝塚歌劇のトップ娘役。 いちごやバラの花、真っ白なファーボレロといった小道具が似合うのも姫の証。メゾ・ソプラノの声が『オーシャンズ11』のようなセクシー系にも似合う、というギャップもすてき。

宝塚 GRAPH (グラフ) 2013年 01月号 [雑誌]

宝塚 GRAPH (グラフ) 2013年 01月号 [雑誌]

武井咲(『愛と誠』『るろうに剣心』) Emi Takei 

小さなころからなりたかった、少年マンガのヒロイン。現在その座を総ナメにしている武井咲。屈託のない演技に育ちのよさと作為すら垣間見る、じつは気になる存在です。『愛と誠』で演じた驚異的自己中心令嬢・早乙女愛のはまりっぷりが、姫キャラを実証。ぶりっこ演技で歌う「あの素晴らしい愛をもう一度」も最高。

(花園magazine 初出)

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