「Aimer 君だけを Aimer 愛している」――
先週から、鼻歌が止まりません。念願だった宝塚歌劇団星組のミュージカル『ロミオとジュリエット』を観劇したからです。
シェイクスピアによる英国産の名戯曲を、隠れたミュージカル大国フランスがサスペンスフルにこってり味付け。現代日本最高の芸達者タカラジェンヌたちが演ずるとなれば、よくないはずがないのです。映画で演劇でバレエで、何度も観ている悲恋物語ですが、号泣して立ち上がれなくなくなったのははじめての体験でした。こういうことがあるから私は、音楽の魔力にひれ伏したくなるのです。
宝塚歌劇というと、多くの人のイメージがいまだ演歌だらけの『ベルサイユのばら』であることを、もったいないと感じています。もちろん、昭和50年代的でファンシーな、懐かしい世界観が現存していることは事実です。5年ほど前、諸先輩に強く勧められて初観劇したのですが、きっと世界名作劇場ファンである私の感性を見抜かれてのことだったのでしょう。
しかし、その音楽や演出は、わずか5年のあいだにもフルスピードで進化し続けています。ヒップホップやエレクトロをどん欲に取り入れたり、人気のファッションブランドとコラボレートしたり。男役スターに「寄り添う」とは名ばかりで「寄りかかる」だけだった娘役にも、魅力的な役柄を与えられることが多くなってきました。
私のいちばんのご贔屓は、星組トップ娘役の夢咲ねねさん。魅惑の悪女から女戦士、16歳の少女ジュリエットまでを巧みに演じ分けるベテランです。私たちの世代の檀れいになりうるのは彼女だけ。遠からぬ未来に退団の日がきても、ずっと応援していこうと心に決めています。
退団といえば、月組組長・越乃リュウさんの退団発表は衝撃的でした。越乃さんは新潟市出身。苗字だけでなく、名前のリュウも県木・柳からとったという郷土愛のひとです。センターに立つことはないけれど、組長として月組の若いトップコンビを支えるダンディな存在感が圧倒的で、ついつい、オペラグラスの視線を集めてしまう。人呼んで「オペラ泥棒」。そんな組長を、同郷として誇らく思っています。
10月の退団公演には絶対にかけつけるつもり。いつか故郷への思いなども伺えたらいいな、と夢みています。
(2013年8月16日付「新潟日報」初出)