大人になってやらなくなくなることにひとつに、ダンスがありますよね。社交ダンスや日舞、ヒップホップなどをお稽古ごととしてたしなむ人はいるでしょうけれど、学生時代のように、仲間とともに音楽にあわせて踊るという状況には、気づけば何年もご無沙汰。それが今回、踊ってきたんです。
AKB48の『恋するフォーチュン・クッキー』。
いまをときめくアイドルのヒット曲です。この曲をさまざまな人が踊って自主的に配信する、いわゆる「踊ってみた」動画が盛り上がっているのをご存知でしょうか。AKB48の運営スタッフたちを皮切りに、海外のファンたちが踊ったバージョンや、ファッションブランド、サマンサタバサのスタッフ・バージョンの動画が話題を集めているのです。とある雑誌の企画で、私もこの動画に参加することになりました。
動画は、編集スタッフから雑誌の読者さん、関係者のお子さんまでが総出で短いカットのパッチワークになるのだそうです。編集長の秘書A嬢から「一緒にまゆゆ(AKB48の渡辺麻友)のパートを踊りたい」と依頼を受けた私は、舞台として日比谷の宝塚劇場前を提案しました。まゆゆが熱心な宝塚ファンであることは有名で、パートのクライマックスが宝塚歌劇団花組の男役スターのポーズだからです。おそろいに見えるようドレスの色まで決めて、文化祭前のように準備しました。
当日。会社から抜け出してきたSちゃんと私、A嬢の3人が集合。スタッフに振付の指導を受け、撮影が始まりました。ほんの10秒程度のダンスですが、見栄えよく合わせるとなると難しい。休演日とはいえ、サラリーマンの方たちの通行も多い。気遣いながらも、カメラの前では堂々としなければなりません。でも、これがほんとうに楽しかった! 振付を覚えることも、必死に仲間と合わせることもだんだん楽しくなってきて、ああ、ダンスっていいな、と素直に思えました。
『恋するフォーチュン・クッキー』という曲がまた、いいのです。70年代ディスコ調のミディアムナンバーで、キンキンした喧しさがいっさいなくて、少女たちの声のほんとうの魅力を惹きたてている。なにより、みんなで踊りたくなる。これって、ヒット曲のあるべき姿ではないでしょうか。こういう曲がある限り、音楽はなくならないと信じられるのです。
(2013年10月4日付「新潟日報」初出)