庭園美術館リニューアルオープンの内覧会へ。
1933年、東京・白金に建てられたある家族のための洋館――旧朝香宮邸の代名詞といえば、アール・デコ様式の建築とインテリア。
今回、約3年の修復を経て行われる建物公開では、いつもの展覧会では見ることのない宮家所有の家具や壁紙、肖像画などが展示され、往時をしのばせる。
大階段を上った先にある若宮の居室と、モーヴピンクの姫宮の居室にはさまれた、鳩彦殿下&允子妃殿下の生活空間がとりわけドリーミング。
書斎にある芸術書の書体やバスルームのタイル模様、午後の日差しに揺蕩うモノクロームのバルコニー……。
装飾的でありながら簡潔で、幾何学的でありながら優美なアール・デコに魅了された夫妻の静かな興奮が伝わってくる。
ゴルフとレコード鑑賞が趣味だった殿下。明治天皇のお姫様で、絵画やデザインが大好きだったおしゃれな妃殿下。もっと知りたくなる、つかのまのタイムトリップ。
日が沈む頃、レセプションがスタート。
ラリックのシャンデリア輝くサロンでは、ピアニスト阿部海太郎さんの演奏があったが、彼のフランス的な、ありし人びとへのいとおしさがつまった曲たち--ピアノのための小組曲《三つの装飾》Ⅰ.香水塔 Ⅱ. モザイク模様の昼下がり Ⅲ. 楕円形の食卓ーーが驚くほど空間にぴったり。
広すぎない空間で分かちあうからこその、幸福感をかみしめた。
新館でいただいたシャンパンとスウィーツも最高だった。
ショコラとラズベリーのタルトにモンブラン、くるみのパウンドケーキ。これらはおいしいコーヒーとともに、併設のCafe du Palaisで楽しめるという。
同時開催の「アーキテクツ/1933/Shirokane」「内藤礼 信の感情」はもちろん、木々に囲まれた美しい空間で過ごすために訪れたい、そんなサンクチュアリだった。