(c)Ken Howard/Metropolitan Opera
火曜日は、同志・小橋めぐみさんと銀座デート。 教文館のハウス・オブ・クリスマスを覗いた後は、東劇でMETライブビューイング『フィガロの結婚』。
これが最高の一日にふさわしい、最高の締めくくりとなった。
映画監督としても著名なリチャード・エアによる演出は、1930年代が舞台。
この伯爵夫人(左)を見よ!
第二次世界大戦前夜の階級社会の名残り――少し時代はさかのぼるけどドラマ『ダウントン・アビー』のような舞台セットと衣装(ロブ・ハウエル)が美しく、革命前夜のロココと同様のエレガンスを感じさせる。
幕間のインタビューで歌手たちが「6週間稽古した!」と打ち明けていたとおり、現代的なコメディ演技や幕切れは映画のように完璧に美しい(とくに三幕の終わりの結婚式のスナップ風!)のにすべてが音楽に則っていて、あんなに動きまわるのに歌唱は完璧で、レヴァインの指揮もキレキレで、もう!すばらしい点を挙げたらキリがないほど!!
あれほど本気でうっとりしたり、笑ったりした『フィガロ』ははじめてだった。モーツァルトが目にしたら、どれほど喜ぶことか!
私の大好きなケルビーノ(愛の天使)、イザベル・レナード。
メゾ・ソプラノの彼女はMETいちおしのアイドル。
ティーンの美少年役が仕草まで板についていて、だんだん男の子にしか見えなくなって、伯爵夫人と一緒にドキドキできる。「たくさんのフィガロや伯爵と共演するなかで、男っぽい所作をいつも観察しているの」とイザベル。ズボン役も「男役十年」(宝塚歌劇の格言)なんだなあ、と妙に感心した。
来年1月に上映されるロッシーニ『セヴィーリャの理髪師』(『フィガロの結婚』の前日譚)では、打って変わって若き日の伯爵夫人ロジーナに早変わり。
おてんばっぷりも楽しみで、たちまちファンになってしまった!
女優の目から見ても「すごい演技力!」ということで、めぐみさんも大興奮で終始リアル拍手をしていた。
オペラ歌手たちは、艶っぽく、軽やかで。
「歌を聞かせる」というより、「気持ちが全てメロディーにのってしまった」という感じで、歌とお芝居をこれほど同時に楽しめることに、体中が熱くなってしまいました。
一幕目の終りで、早くもカタルシスが。
二幕目が終ると、切なさと幸福感がどっと押し寄せてきました。
METライブビューイング、これから、はまりそう。
大切な友人が喜んでくれると、それもまたうれしい。
「熱狂の一日 La Folle journée」は、いつだって分かち合いたいものだから。