いつもの美術館がウォール・トウキョウに変身していた。
入場し、蝋燭の灯りに照らされた暗い空間を音声ガイドをつけて進むと、アニメーションと同じ冒頭のナレーションが期待を盛りあげる。
いよいよ「世界の入口」をくぐるとそこは、シガンシナのとある廃墟のなか。巨人に襲われる恐怖感を、光と音と衝撃(風もくる)で体験できる。調査兵団から案内役の兵士が出迎え、我々を守ろうとしてくれるが……という緊迫のスタート!
そこから贅沢な原画の世界がはじまる。
フィーチャーされているのはとにかく「巨人が人を喰う」「巨人同士の闘い」というギミックへの、作者・諌山創のこだわりだった。作品を取り巻くルーツも、少年時代の微笑ましい憧れから思わず笑ってしまう意外なものまで揃っていて、楽しい。
でもいちばんおもしろかったのは、一緒に回っていたシンガーでモデルの藁科早紀ちゃんが途中でこう言いだしたこと。
「なにかこれ、あれに似てません?スペインの画家の……」
「……ゴヤ!?」(震えつつ)
「そう、ゴヤ!!!」
『わが子を喰らうサトゥルヌス』、たしかに!!
作者自身が意識しなくても、有史以来、クリエイティヴな人々の脳の中ってほんとうにつながっているのだと感動した。
マンガを読むとき、わたしはどうしても自由に憧れる少年たちとか調査兵団の絆とか軍上層部の軋轢とかのストーリーやネームやディテールにばかり夢中になってしまうのだけれど、こうして原画展にくると、画そのものがもつ圧倒的な力に気づかされるのが楽しい。
誰かとくるとまた楽しい。(早紀ちゃん、ありがとう!)
とはいえ、ディテールも欠かせない。
『進撃の巨人』の世界観において重要な役割を果たす中世ヨーロッパの雰囲気と小道具も、しっかり展示されていた。
もちろん兵長もいる(というか兵長だけはいる)。そして巨人。
ほんとうに大きい。
そして360°体感シアター「哮」。別料金だが、これはぜっっったいにはずしてはいけない。
HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使用した全周3D映像で、トロスト区奪還戦のクライマックスを体感できる。調査兵団のひとりとして、立体起動装置を使って!
ゴーグルをかけ、ヘッドホンをした瞬間わたしはトロスト区にいた。
360°どこを見ても陥落した城壁の町が広がっている。空もある。そしてミカサ・アッカーマンに促されその空を飛ぶ! ずっと立体起動装置――空を飛ぶことに憧れていたから、これには感動した。もう、酔いそうになるくらいリアルだった!!
はじめての体験に、みんなで大興奮した。大の大人の男性記者さんも「これは!」と興奮していてほんとうに楽しかった。
「心臓を捧げよ!!!」