本日のOTTAVA Domenicaは、ヨハン・シュトラウス2世のワルツ「投票」からスタートしました。
1861年、ついに選挙権を獲得したウィーンの人びとの喜びのファンファーレに、投票所への足取りも軽くなりそうなワルツです。
「日曜日の本」では、先日読み終えたばかりの英国ミステリ-『ヴァイオリン職人と天才作曲家の秘密』(創元推理文庫)をご紹介しました。音楽と人生を愛するすべてのひとに読んでほしい傑作を、パガニーニ自身の“悩殺ナンバー”とともに。
そして「きょうの朗読」は、みんな大好きフィンジの「ディエス・ナタリス」。幼子イエスの目線から見える世界とは……?
メンデルスゾーンの「わが祈りをききたまえ、主よ」やモーツァルトの「そりすべり」「おもちゃの交響曲」とともに、クリスマスのあたたかな気持ちを高めていただけたら幸いです。
【3時のモーツァルト】
3つのドイツ舞曲 K.905~第3曲「そりすべり」
【きょうの朗読】
フィンジ: ディエス・ナタリス
【日曜日の本】&【麻衣のオススメ】
ポール・アダム『ヴァイオリン職人と天才作曲家の秘密』(青木悦子 訳、創元推理文庫)ヴァイオリンとミステリーは相性がいい。今週のオススメは、読み終えたばかり最新英国ミステリー。ポール・アダムの「ヴァイオリン職人」シリーズ第2弾です。
主人公は、イタリア北部の楽器の街・クレモナに住む64歳の名ヴァイオリン職人ジャンニ。彼のもとに、今度はパガニーニ愛用のクァルネリ・デル・ジェス、通称“大砲”が持ち込まれる。なんとか修理を終えるものの、翌日ディーラーの撲殺死体が発見。ホテルの金庫に残されていたのは、エリーザという女性がパガニーニに宛てた古い手紙だった。ジャンニは楽器や音楽史の知識に加え、長年培った人脈や深い洞察力で謎に挑んでいく――。これがほんとうにおもしろかった!407ページを一晩で読んでしてしまいました! 緻密な取材で音楽業界を描き出す作家はあまたいますが、小説全体から知識でなく、音楽への愛が感じられるのがアダムのすばらしさ。最初の一音に息を飲むようにホールの空気が変わる瞬間、思索しながら演奏に没頭するようすなど、音楽を人生の伴侶にしていなければ書けない描写がいたるところに登場するのです。ミステリーとして楽しめることはもちろん、読み終えるころにはパガニーニの生涯やロッシーニの苦悩、当時の音楽界をとりまく社会情勢まで頭に入ってしまいます。
なにより魅力的なのは主人公ジャンニ。彼は懐の深い、慈愛と寛容の人。実は辛口なのですが、他人を断罪することなく鷹揚に躱します。「彼の音楽への大きな愛情、音楽家たちへの深い敬意には、こちらもいずまいを正される思いがする」(訳者あとがきより)にまったく同感。歴史と現在がつながっているヨーロッパ人のあり方に、音楽に携わる者としての発見もたくさんいただきました。音楽と人生を愛するたくさんのひとに読んでほしい、歴史ミステリーの傑作です。