2月から3月へーー日に日に春の息吹を感じる、希望に満ちた季節ですね。
全国38のFM局で放送中のラジオ『Memories & Discoveries』。
今月の「クラシック・プレイリスト」では、エドガー・モローの新譜『チェロ・ソナタ集~フランク、ストロール、プーランク、ラ・トンベル』を中心に、春のパリが似合うフレンチな名曲をご紹介しました。
主役はモロー同様、生粋のパリジャンだった作曲家フランシス・プーランク(Francis Jean Marcel Poulenc, 1899-1963)。
フランスの大手製薬会社の経営者だった父と、由緒ある家具職人一族であるロワイエ家の娘でリストの孫弟子でもあった母の間に生まれ、何不自由なく育ったお坊ちゃん。17歳で作曲したダダイズム作品『黒人狂詩曲』で知られるようになると、ジャン・コクトー、エリック・サティを支持するオーリック、ミヨー、タイユフュール、デュレ、オネゲルらとともに「新青年」を結成。フランス古典音楽への回帰とドイツ・ロマン主義の放棄などを標榜し、「フランス六人組」と呼ばれるようになりました。
作品は歌曲が有名。フランス的エスプリと独特の哀愁を帯びた作風で「フランス版シューベルト」と評されることも。代表作であるオペラ『カルメル派修道女の対話』や管楽器の室内楽、映画音楽のほか、世俗合唱曲「人間の顔」といった第二次大戦ナチス占領下のレジスタンス活動を支援するための作品も。
モーツァルトを愛したプーランクは、優雅でありながら、激動の20世紀の証人でもあったのです。
1) デュパルク:旅への誘い(2/27放送分)
デュパルクは1848年生まれのロマン派の作曲家。「旅への誘い」は、ボードレールの詩をもとにした代表的フランス歌曲です。
ご紹介した音源では、パリで活躍した歌手クレール・クロワザの伴奏を、当時30歳でピアニストとしても活躍していたプーランクが手がけています。1929年録音の蓄音機のような響きとともに、まずはプーランクの時代へトリップしましょう。
- アーティスト: クロワザ(クレール),デュパルク,ルーセル,フォーレ,プーランク,ドビュッシー,ルーセル(アルベール),リーブス(ジョージ),プーランク(フランシス),オネゲル(アルテュール),プレビル(ピエール・ド)
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2) プーランク:チェロ・ソナタ~第3楽章(2/28放送分)
敗戦で動員解除された1940年に着手し、1948完成させた作品。ロマン派の誇張を排して「雰囲気」を探求した4楽章のなかでも、もっとも「春のパリ」を感じる軽やかなパートをご紹介しました。
楽曲は、モローも敬愛するフランス・チェロ界の巨匠ピエール・フルニエに献呈され、1949年5月に初演されています。
3) プーランク:スヴニール [追憶] ※世界初録音(3/1放送分)
2014年、それまで手稿の状態だったものが死後刊行された作品。1944年に作曲された、戯曲の伴奏音楽だったとか。MCの女優・朝倉あきさんとは、「いま新たに初演ということもあるんですね!」という驚きと発見で盛り上がりました。
表情豊かな演奏者でありながら、音楽史への探求に熱心なモローらしい選曲です。
モローについてはこちらもCheck! ➢
Mikiki | エドガー・モロー『ジョヴィンチェロ~バロック協奏曲集』 垣根なんてない! 進化を恐れない! 新世代チェリストに注目 | INTERVIEW | CLASSICAL
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4) プーランク:愛の小径(3/2放送分)
もっとも有名なフランス歌曲のひとつ。フランス人歌手が来日したときのアンコール・ピースとしてもよく用いられます。劇音楽『レオカディア』第3幕、老婦人が若き日の愛を回想する、瀟洒にして情熱的な曲ーーしかし、作曲年代や疎開先で書かれたことを考えると、熱烈な「パリへのラブソング」にも聞こえてきます。
個人的には生涯を終えるとき、 こんな音楽に包まれていたいと願う曲でもあります。
ある日、私がその小径を忘れてしまったとしても
私の心にかつての愛よりももっと強い
ひとつの思い出が残っていてほしい
あのとき、おののき心乱れた私の上で
あなたの手は熱く燃えていた
- アーティスト: タロー,プーランク,アレクサンドル・タロー,ロナルド・ファン・スペンドンク,ティボール・ヴュー他
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Tokyo FM「Memories & Discoveries」は毎週火〜金 朝5時10分頃、JFN系列32の全国のFM局で放送中。高野出演の「クラシック・プレイリスト」は5:10頃からスタートですが、インターネットでは、いつでも全世界でお聴きいただけます。
次回もどうぞお楽しみに!
➢舞台は20世紀パリ。「愛の小径」の朗読とピアノ生演奏も決定!
プーランクを愛する作曲家・林そよかさんとの「お茶会クラシック」は4/21開講です。