ゴシック小説の金字塔『フランケンシュタイン』。200年の時を経て愛されつづけるこの名作が、18歳の女性作家によって書かれたこと、ご存知ですか?
舞台は、19世紀初頭のロンドン。学者の父と女権拡張論者だった母の間に生まれたメアリーは、亡き母の墓にもたれて本を読んだり、物語を作ったりするのが好きな少女でした。継母との折り合いが悪く、見かねた父によって友人宅へ預けられますが、そこで出会ったのが天才詩人パーシー・シェリー。ふたりは互いの才能に惹かれあい、恋におち、周囲の反対を押し切って情熱的に結ばれます。聡明で正義感にあふれ、質素なネグリジェ姿でも華のあるメアリー(エル・ファニング)は、まさに私たちのプリンセス像。ドレスも小道具も色彩も、細部まで美しい映像はため息ものです。
共演には『ノア 約束の船』のダグラス・ブース、『ロイヤル・ナイト 女王陛下の秘密の外出』のベル・パウリ―ら、英国が誇る若手俳優たちが集結。野心と虚栄、女同士の友情など、現代的な青春ドラマとしても楽しめます。
しかし、この映画の真髄は、情熱や美のその先にあります。いくつもの裏切りや死、偏見に深く傷つきながらも顔を上げ、筆をとり、愛を探し求める「怪物」に命を吹き込むメアリー。「人には様々な生き方がある。それを守るためならどんなことをしても闘う」。強い意志を持つ彼女の言葉の端々に、サウジアラビア初の女性監督アル=マンスールの共鳴を感じ、魂が震えるのです。今、すべての女性に観てほしい、傑作です。
『フランケンシュタイン』
映画を観たらぜひ読み返したいのが、この名作。科学者フランケンシュタインが創り出し、残酷にも捨てた「怪物」とは何だったのか――? 美しい文体と緻密な心理描写で綴られた愛と孤独に涙し、イメージが180度変わるはずです。
(25ans 2019年1月号 初出)