「美人」の原点は、どこにあるのか?
今月ご紹介するのは、私たちが憧れてやまない「美人」の歴史を明治時代までさかのぼり、変革の時代を生きた日本女性のよそおいの変遷を辿る、ドラマティックな展覧会。洋画家・岡田三郎助(1869-1939)らの絵画40点に、化粧道具や着物、ジュエリーなどの服飾品、ポスターや雑誌、写真などの資料を加えた約200点の展示作品で、いまなお多様に変化している「美人」の原点を探ります。
主役は、フランスで油彩画を学び、西洋の美の表現を取り入れた甘美で気品高い女性像で活躍した岡田三郎助。彼は明治末期から百貨店の広告や日本初の美人コンテストにも携わり、新しい美人像を次々と生み出したクリエイティブディレクター的存在でした。大きく潤んだ瞳とふっくらした唇、卵型の輪郭が特徴の「岡田調の美人」たちは、新時代の女性たちの憧れの的だったそう。
《ダイヤモンドの女》は、日本で最初の美人写真コンテストのために描かれた。左手にダイヤモンドの指輪をはめ、頬杖をつく女性は、典型的な「岡田調の美人」。実際のコンテスト優勝者にもよく似ています。
美しく、そして、自由でありたい。いつの時代も女性たちの願いは変わりません。皇族・華族のレディたち、女性の洋装化が進んだ大正時代の「モダンガール」たち、そして意志ある眼差しが印象的な画家のミューズたち――会場に居並ぶ「美人」たちとおしゃれ文化には、時代を超えたメッセージがつまっているのです。
■12/8~2019/3/17 ポーラ美術館
(25ans 2019年12月号 初出)※加筆予定