世紀末への道|ウィーン・モダン

19世紀末から20世紀初頭、皇妃エリザベートが生きたウィーンで花開いた世紀末文化。

それは絵画、建築、工芸から音楽まで、ジャンルを超えたアーティストたちが結集し、新しい芸術を求めた黄金時代の産物でした。そんな「ウィーン世紀末」を、「近代化への過程」という視点から紐解くまったく新しい展覧会が今年、東京と大阪で開催されます。

艶やかにして、スタイリッシュ
「ウィーン世紀末」の全貌を知る旅へ

「ウィーン世紀末」は、けっして突然変異のように誕生したものではありません。本展では時代を18世紀中頃にまでさかのぼり、女帝マリア・テレジア時代に啓蒙思想として蒔かれた種が、ビーダーマイアー時代に発展し、19世紀末にモダニズム文化として萌芽していく様子を、絵画や工芸はもちろん、ドレスやインテリア、グラフィックデザイン、都市改造計画の資料など、多彩な展示品を通してたどることができます。もちろん、クリムトやシーレ、ココシュカら巨匠たちの油彩74点も見応えたっぷり。ハプスブルク家の女性たちや音楽家にまつわる作品が登場するのもうれしい限りです。

エミーリエ・フレーゲは、画家グスタフ・クリムトの生涯のパートナー。ウィーンでモードサロンを経営する聡明な企業家で、経済的・精神的に独立し、女性をコルセットから解放する改良服をデザインしていた。本展の「顔」にふさわしい。

東京展で約400点、大阪展では約330点という圧巻の作品群で味わう、ウィーンの豊穣。美術ファンのみならず、建築ファン、音楽ファン、ファッション好きも歴史好きも必見の一大スペクタクルを、どうぞお見逃しなく!

■開催中~8月5日 国立新美術館/大阪展:8月27日~12月8日 国立国際美術館

グスタフ・クリムト《エミーリエ・フレーゲの肖像》 1902年  油彩/カンヴァス 178 x 80 cm ウィーン・ミュージアム蔵  ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

 

[and more]
『クリムト展 ウィーンと日本 1900』

輝く金箔と鮮やかな色彩。「ウィーン世紀末」の象徴ともいえるクリムトの傑作が一堂に会する展覧会が、2019年の日本オーストリア友好150周年を記念して開催中です。官能的な代表作《ユディトI》や《ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)》のほか、現地のウィーン分離派会館でしか見られない、「第九」をもとに描かれた全長34メートルの壁画《ベートーヴェン・フリーズ》の原寸大複製も登場。歓喜の壮麗さと迫力を体感しましょう。

■開催中~7月10日 東京都美術館

DVD/Blu-ray『黄金のアデーレ 名画の帰還』

本展で絵画が紹介されている、作曲家アルノルト・シェーンベルク。ナチスの迫害でアメリカに逃れた彼の子孫が弁護士となり、ユダヤ系の老婦人とともにクリムトの名画『黄金のアデーレ』の所有権を取り戻した驚愕の実話が映画に。暗い歴史にも、芸術は光を与えます。

■ギャガ DVD \1143 /Blu-ray \2000

(25ans 2019年6月号 初出)※加筆予定

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