アール・ヌーヴォーと聞いて誰もが思い浮かべる、繊細で華やかな女性像――その作者である芸術家アルフォンス・ミュシャは今年、没後80年。これを記念して、ミュシャ財団監修による展覧会がこの夏、東京・渋谷でスタートします。
時代を超えて生き続ける
「新しいミュシャ」との冒険幼少期の貴重な作品、蔵書や工芸品、20代で手掛けたデザインやイラスト、そしてミュシャの名を一躍有名にしたポスターなどを通じて、ミュシャの「原点と魅力」に迫る本展。チェコに生まれ、ベル・エポックのパリを中心に活躍したミュシャ。代名詞である植物のモチーフや華麗な曲線、縦長の作品の形状には、日本趣味(ジャポニスム)の影響もあるとされています。初期に描かれたカリカチュア(風刺画)には、北斎漫画の影響も。
なにより興味深いのが、ミュシャ作品と、そこから影響を受けた現代アートやマンガ作品までおよそ250点を同時に展示し、「ミュシャ様式」ともいえる芸術の流れをたどるこれまでにない試みです。
ミュシャと同時代を生きた画家・藤島武二による与謝野晶子『みだれ髪』の表紙や、1960-70年代のイギリス・アメリカを席巻したグラフィック・アート作品、日本の少女漫画、そして現代の人気アーティスト天野喜孝による『ファイナルファンタジーXIV』のイメージ画。普段よく見る図像のなかに、ミュシャへの「つながり」や「憧れ」がつまっていることに驚きます。時代を超えて愛される画家の秘密をひも解く時間は、夏休みにうってつけの知的な冒険になりそう。友人同士で、親子で、新しいミュシャを見つけにいきましょう。
東京展:7月13日~9月29日 Bunkamura ザ・ミュージアム
京都展:10月21日~2020年1月13日 京都文化博物館 他、全国巡回
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『アラベスク』ミュシャと私たちをつなぐアーティストの一人が、漫画界の大御所・山岸凉子。1970年代から愛され続けるバレエ漫画『アラベスク』 は、少女時代に読んだという方も多いのではないでしょうか。原画に感動したらぜひこの機会に再読を。あの日の情熱がきっと蘇るはず。
著/山岸凉子 白泉社
(25ans 2019年8月号 初出)※加筆予定