ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史

王妃マリー・アントワネットや皇妃エリザベト、そしてベラスケスの名画『青いドレスの王女マルガリータ・テレサ』。私たちになじみ深い歴史上のプリンセスたちをつなぐキーワード、それこそがヨーロッパ随一の名門「ハプスブルク家」です。

芸術を愛し、育んだ
「華麗なる一族」を辿る

やがてスペインや南米・アジアにまで領土を拡大し、「日の沈まない世界帝国」を築いたハプスブルク家がオーストリア統治をスタートしたのは、13世紀末。時はルネサンス。日本なら鎌倉時代。そこから20世紀まで600年、拡大・縮小しつつも「ハプスブルク時代」が続いたのだから、どんなに強大な帝国だったかがわかります。同家の人々が芸術を愛し、芸術家たちのパトロンとなって「音楽の都ウィーン」の基礎を作ったのはご存知のとおり。壮麗なウィーン美術史美術館を訪れれば、絵画や工芸品の豊かなコレクションにも驚かされます。本展には同館の協力のもと、ハプスブルクゆかりの絵画・工芸品・タペストリー・武具など約100点が集結。中世から20世紀初頭まで、時代ごとのロイヤル・ファミリーと、彼らが愛したコレクションを辿ることができます。

高貴なる者の義務のひとつは、芸術や文化を愛し、育むこと。ウィーンが誇る至宝とともに、ハプスブルク家が果たした「芸術の守護者」としての役割に注目してみましょう。

16世紀、オーストリア系とスペイン系に分裂したハプスブルク家。スペインの巨匠ベラスケスの傑作(上)は、ウィーンにいる皇太子に幼い許嫁の姿を伝えるべく制作されたポートレイトでした。多くの肖像画はこうした実用のために、各時代のスター画家によって描かれたのです。

■10月19日~2020年1月26日 国立西洋美術館

ディエゴ・ベラスケス 《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》 1659年 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館 Kunsthistorisches Museum, Wien

 

[and more]
BOOK『マリー・アントワネットは何を食べていたのか ヴェルサイユの食卓と生活』

ハプスブルク家からフランスに嫁いだマリー・アントワネット。彼女の「食生活」に注目し、メニューから食器の好みまでを調べた研究書が登場しました。母マリア・テレジア直伝のナチュラル志向、ケーキよりフルーツなど、興味深い事実が満載。「ほんとうの王妃」を発見できます。

著/ピエール=イヴ・ボルベール 訳/ダコスタ吉村花子 原書房 \2000

(25ans 2019年11月号 初出)※加筆予定

Scroll to top