丘の上の王宮、ドナウ川の自然と大平原、情熱的な民族舞踊や音楽、そしてスパイシーな料理。
どこか謎めいた魅力で私たちを惹きつけるハンガリーから、屈指の名作コレクションが25年ぶりに来日します。
「ドナウの真珠」と称される都で
愛されつづける名品たち
エステルハージ家などハンガリー貴族に由来するコレクションを母体としたブダペスト国立西洋美術館(1906年開館)と、ハンガリー美術専門の機関であるハンガリー・ナショナル・ギャラリー(1957年開設)。2館は2012年に一つの組織に統合され、現在も収蔵分野の再編が進められています。本展ではその成果として、ルネサンスから20世紀初頭まで、約400年にわたるヨーロッパとハンガリーの絵画、素描、彫刻の名品130点が一堂に。クラーナハ、ティツィアーノ、エル・グレコ、ルノワール、モネなど巨匠たちの作品に加えて、日本では目にする機会の少ない19、20世紀ハンガリーの作家たちの名作にも注目が集まっています。
メインヴィジュアルに選ばれたのは、ハンガリー近代絵画に先駆的な役割を果たした画家パールが、結婚したばかりの妻をモデルに描いた『紫のドレスの婦人』。制作当時は草木とドレスの色の強い対比が斬新で不評を招きましたが、今日ハンガリーで最も重要かつ魅力的な名画として広く愛されています。
19世紀半ばから20世紀初頭にかけて、ナショナリズムの機運とともに芸術文化活動も活発だったハンガリー。コレクションから見えてくるのは、どんな色彩であり、どんな国民性なのでしょう。この冬、ハンガリー絵画と出会い、その豊かさを探りに行きましょう。
©Museum of Fine Arts, Budapest-Hungarian National Gallery, 2019
(25ans 2020年1月号 初出)※加筆予定