ダウントン・アビー

「おかえりなさい」。劇場で、思わずつぶやいてしまいました。1912年から1925年の英国を舞台に、広大なマナハウスで暮らすグランサム伯爵家とその使用人たちの生活描いたドラマ『ダウントン・アビー』。2010年の放送開始以来6シーズンにわたって、ゴールデングローブ賞やエミー賞に輝き、世界200以上の国と地域で愛され続けたドラマシリーズの映画版が、ついに公開されます。

舞台は、シリーズ最終回から2年後の1927年。英国王ジョージ5世とメアリー王妃の「ダウントン・アビー訪問」という歴史的一大事を前に、伯爵家の人々や使用人たちは総動員でパレードや豪勢な晩餐会の準備にあたっています。そんな中、一族やメイドたちのスキャンダル、ロマンス、陰謀が次々と明るみに出て――。あらすじだけでも、もはや懐かしい“ダウントン風味”。お屋敷の調度や、女性たちの麗しいドレスといった世界観もあいかわらず麗しく、スクリーンで味わえる幸福に眩暈がしました。

集合写真でメアリー(ミシェル・ドッカリー)が纏う青いドレスは、以前ご紹介したヴェネツィアのデザイナー、マリアノ・フォルチュニによる「デルフォス」。当時(20世紀初頭)一世を風靡したドレスをしっかり取り入れるところに、当主代理の如才なさが伺えます。

そう、なにより嬉しいのは、おなじみのキャストのちょっとした変化。伯爵家の長女メアリーの頼もしさや料理人デイジーの成長に、思わず目頭が熱くなりました。変わらないようで少しずつ変わっていく人生に思いを馳せるような再会に、感謝でいっぱいです。

© 2019 Focus Features LLC and Perfect Universe Investment Inc.

 

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