WAVES/ウェイブス

裕福な家庭に生まれ、輝かしい青春を謳歌していた兄と妹。しかし運命の歯車は狂いはじめ、ある夜を境に、日常は一変してしまう。絶望は、いつか癒されるのか――。あざやかな音楽と色彩が印象的な今作は、たまらなくエモーショナルな「愛と赦し」の物語。時代や国境を越えて誰もが共感できる挫折や親子問題、自分を成長させる出会いや絆の尊さが、奔流のように心に流れこんできます。

波のような運命に押し流されても
私たちは「希望」を見つける

前半は、ハイスクールのスター選手だった兄タイラーの物語。肩の故障を周囲に打ち明けられず追いつめられていく彼の心境に、観る側も視覚・聴覚的効果でシンクロしていき、悲劇に心臓をえぐられます。それだけに、後半の物語は救済でした。絶望と孤独の中で恋人ルークに出会い、傷を分かちあい、兄の罪に葛藤しながらも凛々しく成長していく妹エミリー。「勇気を!」というシャウトに合わせて海へ飛び込むエミリーとルークの姿に、限りない希望を感じました。

生きるということは、波のように絶え間なく押しよせる喜びと、悲しみに向き合うこと。どんなに深い傷も、愛はいつか癒す。すべてを包み込む祈りのようなエンディングテーマ「sound & color」に身をゆだね、困難な時代を生き抜く力をチャージしましょう。

 

今や「クレジットされているだけで観たい」と思わせる気鋭のスタジオA24最新作。圧倒的な存在感を放つフランク・オーシャンらの名曲群は登場人物たちの心に寄り添い、もうひとりのキャストのように私たちの感情を揺さぶります。エミリー役テイラー・ラッセルの凛々しさにも注目。

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(25ans 2020年6月号 初出)※加筆予定

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