新解釈版『白鳥の湖』でバレエ界に新風を巻き起こした英国バレエ界の鬼才、マシュー・ボーン。その後も数々の話題作を世に送り出してきた彼の新作舞台『ロミオとジュリエット』が、いち早く日本のスクリーンに初登場します。
題材は、英国人の魂であり、世界中で愛されつづけるシェイクスピアの伝説的古典。映画音楽の手法をクラシックに取り入れた巨匠プロコフィエフの、優美で力強い名曲はそのままに、コンテンポラリー・バレエとして大胆にアレンジされた新演出版の今作は、自由を奪われ愛が禁じられた近未来の教育施設「ヴェローナ・インスティテュート」が舞台です。そこは若者たちが男女に分断され、接触を禁じられ、厳しい監視下のもと自由を奪われて暮らしている“牢獄”。有力政治家の両親から見放され施設に入れられたロミオは、施設のダンスパーティーでジュリエットと出会い、瞬く間に恋に落ちるのです。夢のようなラブシーン。身も凍るバイオレンス。そして自由への渇望――。言葉のない身体表現からあふれる、狂おしいほどのエモーションに驚き、心揺さぶられる体験になるはず。まだ誰も見たことのない新世代の『ロミオとジュリエット』を、いずれ劇場で目撃しましょう。
「映画館上映にとても興奮している」と語っていたマシュー・ボーン。これまでは劇場に足を運びづらい人々へのアクセスがフィーチャーされてきた映画館上映ですが、コロナ禍を経て、今後は貴重な国外の新作に触れ、芸術を支援する機会にもなっていくはず。ぜひ注目を。
©Illuminations and New Adventures Limited 2019
(25ans 2020年7月号 初出)※加筆予定