©Kouichi Miura
今週のテーマは「エターナルサマー」。晩夏の気配とともに、あざやかな夏の思い出をたっぷりお届します。
アンダーソン: 夏の名残りのばら
シューマン: ロマンスとバラ―ド 第4集 op.146~夏の歌
アイアランド: 夏の夕べ
ピアソラ: ブエノスアイレスの四季(ヴァイオリンと弦楽編)~夏
カバレフスキー: 森の中の小さい草原の夏の朝
ガーシュイン: 歌劇「ポーギーとベス」~サマータイム
ファニー・メンデルスゾーン: 夢
デイヴィス: さらば、ストロムネス
旬の話題はなんといっても、鈴木優人さんが指揮した麻布学園創立120周年記念演奏会のご報告(8/15)。ガーシュインを弾く山下洋輔さんの力強いカデンツ。異世界に没入したと思ったらふと戻ってきて、満面の笑顔で指揮者とアイコンタクトする、揺るぎない信頼感。あこがれの男子校の学園祭ライヴで最高の瞬間に出会ったような、手の届かないものの輝き。鳴りやまぬ拍手と歓声に応えてからの鮮やかなサマータイム!
優人さんらしい爽快なアレグロにあわせて体を揺らし、気持ちよさそうに演奏するオケのみなさんを眺めているうちに感極まりました。音楽が好きという気持ち、いま最高に楽しいという気持ちが星みたいな輝きになって、脳天からダイレクトに流れこんでくるようでした。「こういう瞬間、こういう思いをこそ、私は書いていきたい」。あの気持ちを、絶対忘れません。
また、9/11公開の映画『ボリショイ・バビロン』の速報(今年はドキュメンタリーの当たり年!)、林田さんからは石橋メモリアルホールでの古楽公演など最新情報も注目です。
ひさしぶりの「きょうの朗読」では、誰よりも厳しく、凛として生きることを支えてくれる大切な存在、茨木のり子さんの詩「汲む」を朗読させていただきました。残りの夏の一瞬一瞬をかみしめて、大切に生きよう。そんな気持ちになりました。
たくさんの方に聴いてほしい、大切な回です。
【3時のモーツァルト】
アヴェ・ヴェルム・コルプス
【きょうの朗読】&【麻衣のオススメ】
茨木のり子『おんなのことば』(童話屋の詩文庫)憧れのひとについて、ときどき考えます。
母親でも、姉妹でも、友人でもない。いわば偉大な先達のひとりなのだけれど、もしかしたら近親より近く、いつも心に寄りそっている。わたしの場合、そんな運命の女性たちとの出会いは、本のなかにありました。これまで「日曜日の本」でご紹介してきた須賀敦子さんも、藤本ひとみさんも萩尾望都さんも、みなさんそんな存在です。そして、誰よりも厳しく、凛として生きることを支えてくれる大切な存在。それが、詩人茨木のり子さんなのです。
出会いは、国語の教科書に載っていた「わたしが一番きれいだったとき」でした。厳しさと、前向きで瑞々しい感性が同居することばに衝撃を受けました。すぐに詩集『自分の感受性くらい』を手に取り、打ちのめされました。「駄目なことの一切を 時代のせいにはするな」。なんて気高い、王妃のような勅。わたしのものの考え方、人生の基盤には、茨木さんのことばがしっかりと根づいています。
詩は、毎日読み返すものではありません。物思いに沈んだ夜にふと手に取って再会する、あざやかなことば。リズム。それを感じるたびに、思わず涙がこぼれるのです。
年老いても咲きたての薔薇 柔らかく
外にむかってひらかれるのこそ難しい
あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと……
きょうの放送で、大好きな「汲む」という詩を朗読させていただきました。わたしのいちばん根っこの部分にある柔らかい、大切な気持ちを、リスナーのみなさんと分かちあえたら幸いです。