大晦日の午後、ゆったりとすてきな1年を振り返る――
一年間の感謝をこめて、恒例のHIT LISTをご紹介いたします。
●WORKS
2015年は、この数年で広げた自分の仕事を見つめなおし、なにがほんとうに大切なのかを学ぶ「成長」の年になりました。
OTTAVAや東京フィル、25ans、そしてエンタメステーションなどでの取材を通して、ご恩ある方と再会したり、あたたかい言葉をかけていただき記者になりたてのころの志を思い出したり。10代のころからの夢もたくさんかなえることができました。写真は、たくさんの興奮を味あわせてくれた指揮者バッティストーニ×東京フィルの「第九」。会場中を埋めつくす笑顔に、この夜も大満足でした。
●ART
音楽だけでなく、美術展の取材もつづけています。今年のナンバーワンはBunkamuraザ・ミュージアム「ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美」。年末に参加させていただいたあなたが選ぶ展覧会2015では、これと同館の「エリック・サティとその時代」、そして大好きな三菱一号館美術館の「画鬼・暁斎―KYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」へ投票しました。
写真は、毎回ミュージアム・ショップまで楽しみな一号館で現在開催中の「プラド美術館展」のポストカード。12月22日にスタート、ウィリアム・モリスのファブリックもすてきな「ラファエル前派展」のもようも、年明けにしっかりお届けしたい。
●MOVIE
記者としての参加が2年目となった東京国際映画祭。今年はエンタメステーションの特集「映画祭で出逢いたい」でTIFFリポーターズを結成したり、一眼レフでの写真撮影に挑戦したり、チャレンジングですばらしい経験になりました!
うれしかったのは、尊敬する大女優ヘレン・ミレン(写真:私)の来日。レッドカーペットを支配するような女王の威厳、優雅な身のこなしを目の当たりにして、背筋が伸びました。
念頭に観たドキュメンタリー『ディオールと私』も忘れられない傑作でしたが、ヘレン・ミレンが主演した『黄金のアデーレ 名画の帰還』は、音楽(シェーンベルク)、美術(クリムト)、男女バディ、そして貴婦人の生きさまと「前を向いて生きていくこと」という愛すべきエレメンツをすべてつめこんだ、今年のナンバーワン映画です。
振り返ってみると、私のレビューのテーマは20世紀、ナチスの罪、そして人々の絵画や音楽にかける思いでした。
藤田は、なんのために絵を描いたのでしょう?
私はなんのために? 生きている実感を得るため――そうなのかもしれません。だとすれば、連日たくさんの文章を書いて、たくさんの方に読んでいただきながら、仲間と映画を観て、飲んで、笑って、語り合ったこの映画祭の10日間は、生きる喜びそのものでした。
編集部と、応援してくださったみなさまにあらためて御礼を申し上げます。
●ENTERTAINMENT
エンタメステーションでは、映画祭のあともさまざまなエンターテインメントの取材をさせていただきました。
なかでも12月12日、日比谷公会堂にて開催されたTVアニメ「昭和元禄落語心中」の放送開始記念イベントでは、人気コンテンツと日本のクラシック、落語への愛が見事に融合した幸福な時間を味わうことができました。
原作の雲田はるこ先生は、拙著『マンガと音楽の甘い関係』にサティ「ジュ・トゥ・ヴ」をイメージした表紙画を描いてくださった、音楽愛あふれるひと。先日は栃木まで伺い、ひさしぶりのインタビューをさせていただきました。エンタメステーションでは、年明けも「マンガと音楽」を追いかけていきます!
●MET LIVE
毎年大みそかに思い出す、METライブビューイングの歌舞伎座公演。驚愕だった新エンターテインメントも、今シーズンで10周年です。
ポスターには美しき「マノン・レスコー」を起用。フィギュアスケートの人気演目「トゥーランドット」や「蝶々夫人」も上演されます。「劇場にオリンピックを!」というゲルプ総裁やスタッフたちのドキュメンタリーに刺激され、より広い層のお客様に楽しんでいただけるよう絶賛企画中です。
●MUSIC
今年のナンバーワン、演奏会から選ぶのはいつも難しい。
ただ、人物を選んでいいというなら、まっさきに挙げるのは鈴木優人さん。指揮者にしてオルガニストにして作曲家にしてプロデューサー。クリスマスにサントリーホールで行われたオルガンコンサート(写真)はもとより、春のラ・フォル・ジュルネ、夏の麻布学園オケ、そして秋の東京芸術劇場「ジョワ・ド・ヴィーヴル」と、彼の世界観に魅了されつづけた一年でした。
同世代の希望の星、そしてマントのオルガン王子。2016年の活躍も楽しみにしています。
●DRAMA
昨年末の『ボルジア家 愛と欲望の教皇一族』につづき、この年末もヨーロッパを舞台にしたゴージャス時代劇にハマっています!
英国女王エリザベス1世のライバルとして知られるスコットランド女王メアリー・ステュワート。わが神・萩尾望都が連載中の『王妃マルゴ』にも登場する彼女の青春を描いた『REIGN クイーン・メアリー』は、日本の少女マンガにインスパイアされた現代的人間ドラマが魅力。『ゴシップガール』のスタッフが参加した「いま着れる宮廷衣装」や音楽にも注目です。2016年は、これらの海外ドラマをクラシック界一の歴女ハーピスト・西山まりえさんとおしゃべりするような番組を作りたい!(宣言)
●OSOMOTSU-SAN
最後に、いま一番気になるエンターテインメントを。
2015年10月にスタートした『おそ松さん』。生誕80周年を迎えた赤塚不二夫の名作『おそ松くん』27年ぶりのアニメ化にして、「伝説の六つ子が帰ってきた!しかも、大人(ニート)になって・・・!」という衝撃的な設定。放映後に問題となってはディスク収録が見送られること数回のブラックジョーク。赤塚イズムを継承した誇り高き「これでいいのだ!!」感――メアリー・ブレアみたいな色彩設定やファンキーでクールなEDもあわせて、夢中になっています。
この年末は、帰省にあわせて故郷・新の松イベントを取材しました。
わたしには好きなものがたくさんあります。自分だけが頼りのセレクトはカテゴライズが難しく、かつては「これは書くべきではない」と決めつけていたものもありました。この数年、さまざまな出会いやチャンスをいただくことで、少しずつ変化することができました。
書きたい。その思いこそがすべての原動力です。書かないと、まるでピアノのレッスンをなまけたときのように書けなくなる。夏にはこの苦しさをひさびさに味わいました。仕事だけじゃなく、生き方にもたくさんの固執があったんだと気づきました。
2016年は、しなやかな心でたくさんの喜び、たくさんの思いを書き記していきたい。そして、それをより多くのひとと分かちあえるよう、前進しつづけます。
みなさまもどうか、よいお年をお迎えください。
心からの感謝をこめて、
高野麻衣