文化するソーシャライト

“ソーシャライト”という人々をご存知だろうか?
世界に衝撃を与えた9.11から今日で6年。
“その後”に現れ現在ニューヨーク社交界の一大勢力なっているのが、“ソーシャライト”。
みな30歳前後の若者だ。
ニューヨーク社交界には、10年おきに新世代が現れ、そのタイミングは景気変動の波に呼応するように一致しているのだという。

ファッション・デザイナーのミューズとなって、メディアの注目を浴びる彼女たちは、いまや垢まみれの“セレブ”に変わって、日本の女性誌でも2年ほど前から騒がれ始めている。
その勢いたるや、ハリウッド女優やモデルのポジションを脅かしつつあるとか。(ちょっととらえ方が偏っているのでは?)
貴族や実業家の血筋もいるにはいるが、多くは高名な作家やジャーナリスト、デザイナーの娘で、自らも同様の職業で起業し、成功している例が多い。*1
シックで冷静で、地に足のついた道を歩む有能な女性たち。
なかには、9.11で愛する人々を亡くしたことをきっかけに、人生を変えた名パブリシストもいる。
少し前までの「パークアヴェニュー・プリンセス」との違いは、「姫じゃない、自ら行動する=ソーシャルする人々」であることではないか、と私は考えている。
※だから、日本女子よ、彼らをパリス・ヒルトンなどといっしょにしてはいけません!

デザイナーとのつながり、女優や実業家の相関図たるや、さすがの社交界。壮観だ。
Socialite Rankなる情報サイトまであり、Top 20 Socialites(スタイル、デザイナーとの新密度、メディアへの露出度、パーティへの出席率などからはじき出され、隔週更新!)といった形で格付けされてしまうというから、「社交」という仕事もハード。*2
この格付けの条件のひとつに「貢献度(ファッション、パーティへの)」という項目もあったのだが、もっぱらファッション界の話題が多い。
現代のカルチャーの中心=ファッションなのだろうか。
もっとこういう人たちが、アートにも貢献すればおもしろいのにな、と思う。
 
ロシア王族の血を引く兄妹ヴァレンタインとオルガ・レイは、現代のソーシャライトよりももう少し下の“新世代”。メトロポリタン美術館を「自分の家のように落ち着く場所」と称する。
歴代の一族が美術館を支え、本人たちもホイットニー美術館のガラ・パーティを企画している。仮装パーティーのコスチュームには、METの衣裳係が協力したという。
まさに“パーティの総合芸術”。
「ソーシャライトは一般人で、名前はただのレーベル」「大事なのは、そのレーベルをいかに有効活用するか」
彼らの言葉に、ものすごく共感する。

Socialite (English Edition)

Socialite (English Edition)

 

*1 アメリカとパリのVOGUEを束ねる女帝たちの娘も、社交界(およびフロント・ロウ)の常連。
ご母堂アナ・ウィンター様といっしょのビー・シャファー(左)と、フレンチ・ヴォーグ編集長カトリーヌ・ロワフェルドの娘で、パリジェンヌらしい佇まいのジュリア・レストアン。グラフィックデザイン会社のオーナーでもある。
 
*2 トップの常連ティンズリー・モティマーは、日本女子の間でも人気・知名度ナンバー1。
某日本企業でバッグのデザインも手がけているので、ちょっと安っぽいかと思いきや、なかなかの学究肌。
ニューヨーク公立図書館のThe Young Lion(若手作家、アーティスト、発明家を支援する組織)のメンバーであり、美術館フリック・コレクションのヤング・フェローズ・コミュニティの共同議長も務めている。
 
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