悩ましく、ひどく、愛しい


小野不由美「十二国記」の新作を読む。圧巻。

万民の前に君臨する王や麒麟というモチーフ、息を呑むようなアクションやカタルシスもないままに、どうしてこんなにも深く、感情を揺さぶる一編が書けるのだろう。
どうしてこんなにも「十二国記」でありつづけられるのだろう。
おそらく、小野不由美がジュニア向けの時代から書つづけているのが、ファンタジーよりアドヴェンチャーよりなにより、ひとの心の奥深いところの醜さ、恐ろしさであり、それでも信じつづけたい人間というものだったからではないか。
わたしには瑛庚と陽子が重なって見える。
ファンタジーぎらいの私がどうして十二国記をすきか、その、謎がとけた。 
 
ひさしぶりに虚構の世界にどっぷり浸ったからか、有栖川有栖のエセーを好もしく読む。
「悩ましく、愛しいもの」。 たしかに、である。
レコードやCDの音楽が「ダウンロードするもの」になったように、本もやがて電子化があたりまえになるだろう。
ページをめくる感覚、はすでに開発されているらしいし、紙の手触り、といってもそれが贅沢なノスタルジーであることはわかりきっている。
それを求めるひとが絶えることなく、本がなくなることがないだろうことも。

すべての本が愛蔵版になるのだ、と言い切る未来予想がおもしろかった。
愛される本。いいじゃないか。
黄色い表紙を抱きしめながらおもう。

 
 
あなたがだいすきよ。
今夜は一緒に眠りましょう。
ね。ヨムヨム。 

yom yom (ヨムヨム) 2009年 10月号 [雑誌]

yom yom (ヨムヨム) 2009年 10月号 [雑誌]

 

 

 
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