この春、仲間と「花園magazine」を創刊しました。
そもそもどうしてわたしたちの集りを「花園会」と名づけ、“雑誌”のタイトルにまで冠したのか――いろんな理由があるけれど、わたしの場合このバーネットの小説、そしてアニエスカ・ホランドによる映画を抜きには語れません。
「花園ブックガイド」の1冊目は本ではないけれど、そんな、わたしの心の奥深いところにある作品から。
図書館っ子かつ世界名作劇場っ子だったわたしは、英国をはじめとする外国の児童文学/少女小説に大いなる影響を受けて育ちました。なんといっても大好きなのが、「小公女セーラ」でおなじみのフランシス・ホジスン・バーネットFrances Hodgson Burnettの作品。 彼女の作品には共通して帰国子女が主人公の元祖・少女小説といった趣があって、ヒロインは必ずしも“気立てのよい子”ではない、そういうところが、いい。
『秘密の花園』(The Secret Garden、1993)は“児童向け”という子どもだまし感のまったくない、ジュブナイル映画の最高傑作です。1906年のイギリス。インドからの帰国子女でいつも不機嫌なメアリーがひきとられる、クレイヴン伯爵の暗く重厚なマナハウス。使用人が薄明かりの早朝に口ずさむ「グリーンスリーブス」。いまは亡き美貌の伯爵夫人の肖像と、彼女の花園の鍵。こまどり。子どもたちのマフラー。芽吹きの春。イングリッシュガーデンに咲き誇るばらやつりがね草、その、光と翳の美しさ!
おじ様は初めて笑い わたしは泣くことを知った 花園はいつも開いている そして 力強く生きている わたしたちの世界は 愛の花園なのだ
主人公は10歳のメアリーだし、彼女やその従兄弟コリンの成長物語ではあるわけだけれど、ここまでロマンティックな映画になったのは、たぶん製作総指揮がフランシス・フォード・コッポラだから。自分の思い描く映像を作り上げるまでは決して妥協しないという、コッポラ家のゴッドファーザーによる濃密な“暮らし萌え”描写と、ものうげな伯爵役ジョン・リンチの功績でしょう。
きっかけは、やはり「オリーブ」の紹介記事でした。この映画によってアニエスカ・ホランドや、主題歌をうたうヴァージニア・アシュトレイに出会えたことを、いまでも感謝しています。
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(「花園magazine」初出)