海の日には、海へ行きたいタイプです。友人が逗留しているのをいいことに、週末ごとに逗子マリーナに通う日々。この夏には、ウェイクボードあたりができるようになってしまうかもしれません。スポーツと縁遠い文化系女子をやっていると、そういうベタな夏の過ごし方を珍しがられることが多いのですが、村上市岩船で生まれ育った私にとって「夏は海」。高村光太郎的に言えば、東京には空がない。広い海もない。だから湘南へ脱出するのです。
いま思えば、徒歩5分で港に、10分で浜辺に出られる少女時代って、なんて贅沢だったんでしょう。湘南の海岸線を走りながら、思い出すのは父の車の後部座席。ノスタルジーの呪縛って、案外あなどれないものです。
海辺のドライブに欠かせないのは、当然サザンオールスターズです。これもまた、桑田さんと同い年の両親の影響ですが、そうでなくてもサザンほど、ドライブの高揚感を高めてくれる音楽ってちょっと見当たらないのではないでしょうか。ためしに先日、「サザン以外」というルールで新しいBGMを発掘しようとがんばったのですが、完全なる失敗に終わりました。BIGINでは沖縄を連想しすぎるし、ビーチボーイズもアメリカ西海岸のローカル臭が勝ちすぎる。「海」という代表作があるクラシックの作曲家ドビュッシーでギャップを狙ってみるも、まったりしすぎて南仏のリゾートみたい。ためしに湘南乃風というグループの曲もかけてみましたが、若づくりすぎて大爆笑でした。そんななか「あ、この曲いい!」と感じるイントロは、やっぱりすべて、サザン!
サザンのすばらしさって、バランス感覚ゆえの普遍性なんだと思います。歌謡曲らしいポップさや琉球音楽への傾倒の上に、原点である60年代のサザン・ロックが洗練というフィルターになってかぶさり、どこか異国っぽい。でもとんがりすぎない。だから湘南を歌っているのに、日本海沿いで聴いてもぴったりくる。どの年代にも夏を連想させてしまうノスタルジー力が、あふれ出す。
まるで古くて新しい、の見本です。デビュー35周年の活動再開を発表したサザン。長期にわたって活動できるのも、絶妙なバランス感覚のなせる技でしょう。音楽は、みんなが分かちあえるものであってほしい。私はだから、サザンが好きなのです。
(2013年8月2日付「新潟日報」初出)