Photo: Jun Keller
正月の朝の空気はすてきなもの。
昔の人は、正月ならではのすがすがしく華やいだ雰囲気を「淑気(しゅくき)」と呼んだのだという。はじめて知ったのだが、とても美しいことばだ。「淑」は「淑女」にも使われる字。なんとなかくおしとやかなこと、上品なことと認識していた言葉が、いっそう晴れやかに感じられた。
2015年もすがすがしい淑女でありたいと願いながら、元旦の夜はロゼのシャンパンを開けて、恒例のニューイヤーコンサートに浸った。薔薇にダリアに、フリージア。ホール中を彩る花の装飾とバレエが彩るこの中継を、私はシャンパンを準備して味わう「完璧な乙女の年中行事」と位置づけている。
2015年の指揮者はズビン・メータ。これまでも4度この指揮台に立った、インド出身のベテラン・シェフによる正統派濃い口の味つけもまた、おつなものだった。
スッペの「ウィーンの朝・昼・晩」にはじまり、「シャンパン・ギャロップ」では団員にグラスを配って乾杯したり、アンコールの大トリ「ラデツキー行進曲」では客席に細かく指示して拍手させたり。爆発ポルカの爆発音にはほんとうにびっくりしたけれど、そのあとの紙吹雪の美しさが忘れられない。
鮮やかなピンクやオレンジのはなびらが舞いおちているような優雅な祝祭。こういうもののために、わたしはクラシック音楽を聴くのだとすら思った。
ありがとう、マエストロ!
実際に今年は、ウィーン大学創立650年にはじまり、エドゥアルト・シュトラウス生誕180年、リンングシュトラーセ(環状道路)建設150年という祝いの年。皇妃エリザベートの時代が、ぐんと近づいてくるような話題である。
(NHKスタジオへ、舩木篤也さんととに『モーツァルト!』『エリザベート』主演の井上芳雄さんが招かれているのも心憎かった!)
Photo: ORF/Felix Breisach Medienwerkstatt.
一方で、世代交代したオーケストラの団員たちはほんとうに若々しくて驚いた。歴史は続いていくのだ、というウィーン・フィルの意思を実感した。
「学生ポルカ」や「酒、女、歌」ではウィーン大学のキャンパスが舞台となったバレエが。Davide Bombanaueによる振り付けと、ウィーンに拠点を置くメゾンELFENKLEIDとPETAR PETROVの衣装。
Photo: ORF/Günther Pichlkostner
花々は、15人のフローリストによって3万本の花が飾られた。インド出身のマエストロにちなんで、鮮やかな色合いのピンク、オレンジ、深いイエローが選ばれたのだという。
Photo: W. Hedenborg
こうした舞台裏を知るたびに、ニューイヤーコンサートがほんとうにいとおしくなる。
音楽は、音楽だけで成り立つものではない。
一昨年ぐらいまで全然クラシックに関心なかったわけ。でも高野麻衣さんのクラシックガイドを読んで、図書館でCD借りていくうちに今ではウィーンフィルのニューイヤーコンサートを見ないと私の新年は始まらないとまで思えるようなった。――真中らぁら
昨年の終わりに、涙が出るほどうれしい感想をいただいた。こういうことがあるたびに、私は私の信じる美しいものを、そのすべてへの愛を、臆せず語っていこうと思う。
2015年がみなさまにとって、愛いっぱいの一年になりますように!
http://www.wienerphilharmoniker.at/jp
- アーティスト: ズービン・メータ(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- 出版社/メーカー: SMJ
- 発売日: 2015/01/21
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