三が日最後の夜、今年も海老蔵ドキュメンタリーをながめ、友人と語りあった。
過去の屈託と、それにともなう視野の広さ。「未来へつなごう」という意志。自分の存在が影響力を持っていることも、敵をつくりやすいこともよくわかっている海老蔵の、生まれながらの王者感がとても好きだし、自分もそうありたいと思う。同時に、麻央夫人のように賢く優美でありたいとも思う。
それが私であり、だからこそ私はプリンセスを愛している。
私の「姫キャラ・リヴァイヴァル」は2013年のことだった。
ある日の編集会議の帰り道、立ち寄ったコンビニでディズニーコラボ・コスメを目にしたガーリエンヌちゃんがひとこと、「わたしはデイジーがいちばんすき!」 と叫んだのです。はっとしました。なぜならわたしは「女の子はミニーマウスが好き」 と信じてうたがわない人生を歩んできたから。ミニーとはすなわちキング(ミッキー)の恋人で、みんなのマドンナでもある、アニメのヒロイン役です。シンボルはリボンやお花。イメージカラーはピンク。すきなものはお菓子作りにショッピング、そして音楽。…まるでマリー・アントワネットのような姫キャラが、ごく自然なわたしのあこがれでした。だからこそさまざまな読書と平行して、「JJ」や「Cancam」を愛しつづけてきたのだと思います。
もちろん、頭ではわかっているのです。“ミニーではない”女の子はたくさんいるし、自分自身のなかにも”ミニーではない”部分がたくさんある。それは当然のことです。 ひとはだれも、一面だけでは語れないのだから。問題は、現在の文化系界隈のおきにいりと、女の子のキラキラのあいだに大きな断絶があることです。
読者さんからいただいた、一通のメールが心に残っています。 「どうしてわたしはキラキラをあきらめてしまったんだろう」 ――あまりにも真摯で、涙がこみあげました。 わたしにも少しだけ、「キムタクがすき」「スイーツや恋バナがすき」と言うのが罪なのではないかと思い込んでいた時期があったからです。それは、とても違和感だらけで、息苦しい枷でした。
でもいまは違います。わたしはスイーツであり、オタクでもあります。こうして花園magazineをつづけることで「考え方が違うことは楽しい」と確信し、「どちらもわたしである」と主張できるようになりました。両極端なあこがれこそが私自身であると、いま、心から思えるのです。新しい年に誓います。 わたしはもう、姫キャラを隠さない。そしてミーハーと硬派のあいだで揺れるたくさんのマージナル・ガールに、花園magazineを捧げます。
(2013年1月1日「花園magazine」より)
おなじ気持ちでいま、このSalonetteを綴っている。
2015年のテーマは「有言実行」。友人からは「いつもでしょ」と笑われそうだけれど、大きな目標だけじゃなく、日々脳内に渦巻いている「スキ」という気持ちや「やりたい」「なりたい」という憧れをていねいに発信して、実現すること。それがテーマ。
小さな達成を重ねることで、大きな成長を実感したい。そんなふうに思わせてくれた5人のプリンセスを、今年も紹介しよう。
◆ルクレツィア・ボルジア Lucrezia Borgia
「おまえはルクレツィア・ボルジア。イタリアを揺るがす女。そして羨望の的だ」
チェーザレ・ボルジア(写真右)のことばが、すべてを表している。ルネサンスの絶頂期にローマ教皇の娘、そしてあのチェーザレの妹として生まれ、のちにフェラーラ公妃として尊敬を集めた「高雅な公爵夫人」。マキャヴェリの『君主論』や後世の創作によって、冷酷な一族のファム・ファタルとして描かれることも多かったが、最近では、聡明なプリンセスとしての側面が注目されている。
ニール・ジョーダン監督のドラマ『ボルジア家 愛と欲望の教皇一族』でイタリア系英国人女優ホリデイ・グレンジャーが演じるルクレツィアは、まさに新時代のルクレツィア像そのもの。政略結婚があたりまえの時代に恋を求めることにも、世界をより美しくすることにも貪欲で、自分がその力(ノブレス・オブリージュ)を持っていることをしっかり自覚している。欲望に忠実なのに、清らかさを失わない彼女を見ていると、勇気がわいてくる。
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◆スペイン王妃レティシア
同時代を生きるプリンセスのひとり、レティシア・オルティス・ロカソラーノ。25ans 2014年11月号の「プリンセス事情」にも書いたとおり、昨年6月前国王フアン・カルロス1世が退位を表明し、夫フィリペ6世が即位。ついにスペイン王妃となった。
1972年9月15日生まれ。誕生日も、ジャーナリストという前職も似ている彼女には、昔から親近感と憧れを同時に抱いている。高校時代の教師と10年交際して結婚したり、アメリカ同時多発テロやイラク戦争を取材したり、彼女の人生は情熱と行動力に満ちている。夢に向かって全力で邁進し、ほしいものを手に入れること。その強いまなざしを目にするだけで、すっと背筋が伸びる先輩なのだ。
◆イザベル・レナード Isabel Leonard
イザベル・レナードは、ニューヨーク生まれのメゾ・ソプラノ歌手。ジュリアード音楽院を卒業し、2007年にメトロポリタン歌劇場デビュー。以来、世界中のスターが集結するMETで、“地元の星”として絶大な人気を誇っている。
十八番は、モーツァルト『フィガロの結婚』のケルビーノやロッシーニ『セヴィリャの理髪師』のロジーナ(写真)。個人的には2010/11シーズンのMETでのモーツァルト『コジ・ファン・トゥッテ』や、パリ・オペラ座でのヘンデル『エジプトのジュリオ・チェーザレ』(エマニュエル・アイム指揮、ローラン・ペリ演出)で知ったのだけれど、今シーズンの『フィガロの結婚』(リチャード・エア演出)ではじめて美少年ケルビーノ役を観て雷に打たれてしまった!宝塚並にしぐさもクール!
1月23日からは『セヴィリャの理髪師』のHDも公開。『フィガロ』では少年として「恋とはどんなものかしら」と歌いかけた美しい伯爵夫人の、おてんば少女時代を同じイザベルが演じるという倒錯感もいい。まさにライブビューイング時代の歌姫である。
◆平野綾 Aya Hirano
ミュージカル『モーツァルト!』でコンスタンツェを演じていた平野綾にも、すっかり夢中である。ウェーバー家の姉妹たちがステージに現れたとき、一瞬で、彼女がヒロインだとわかった。あの「華」が、いまでも忘れられない。
いわゆるアイドル声優として一世を風靡した彼女だが、彼女の夢はずっと、ミュージカルだったのだそう。歌にも演技にも全力で、ヒールになることも恐れず突き進んできた彼女が、夢の帝国劇場の舞台で輝いていたのがほんとうにうれしかった。2015年は、彼女のプリンセシーを広い世界の人に知らせるのが目標。2010年のフォトブックのような女の子向けの特集を、ぜひ25ansなどに提案したい。
◆有村架純 Kasumi Arimura
海老蔵ドキュメンタリーにも登場して驚いた、言わずと知れた“旬の女優”。2014年には『思い出のマーニー』『くるみ割り人形』でのヒロイン役に立て続けに接して、その懐かしいプリンセス声優の才能が気になりはじめた。よく言われる“昭和のアイドル感”も、奇をてらわない品のいい演技につながっているのかもしれない。
舞台『ジャンヌ・ダルク』を見逃したのは残念だったが、今年もきっと、たくさんの機会がありそう。まずは映画『ストロボ・エッジ』が楽しみ。『マンガと音楽の甘い関係』に書いた、青春と恋と音楽の三位一体にも注目したい!
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