美術館ウィーク、2日目は乃木坂へ。
国立新美術館でスタートした 「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展 from 1989」は、われわれの世代にはたまらない思春期再放送博覧会だった。
1989年というのは、忘れられない年だ。はじめに昭和が終わり、天安門事件が起きて、ベルリンの壁が崩壊し、最後に冷戦が終結。日々のニュースに当時9歳だったわたしは、
「歴史っていまもつづいてるんだ!」
とショックを受けた。わたしの「はじまり」の瞬間だった。
サブカル界にとっても「手塚治虫の死」という、おわりとはじまりの年。本展は、そこから25年間のマンガ・アニメ・ゲームをボーダーレスに俯瞰していく。
展示は全8章。『NARUTO-ナルト-』『名探偵コナン』『美少女戦士セーラームーン』といった「現代のヒーロー&ヒロイン」(『少女革命ウテナ』も!)を皮切りに、「テクノロジーが描く『リアリティー』」「ネット社会が生み出したもの」「『場』としてのゲーム」「キャラクターが生きる=『世界』」「交差する『日常』と『非日常』」といった観点から膨大な作品が紹介される。
なかでも印象深かったのが、ファミコンの歴史。
幼なじみのミツオくんちで遊んでた、あのスーファミやあの64が、ガラスケースに入って陳列されている。それだけでちょっとシュールだ。ちなみに、ゲームボーイの前身(?)のバーチャルボーイというのははじめて知った。昔の携帯電話みたいに大きい。
形は似ていても、昨年の「進撃の巨人」展でも体験したHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の全周3D映像はやっぱり楽しかった。長時間、思いきり体感してみたい!
【Art】上野が陥落した日 | 「進撃の巨人」展 – Salonette
第5章の「キャラクターが生きる=『世界』」では、初音ミクを筆頭に『アイカツ!』『うたの☆プリンスさまっ♪』など、「歌い、踊る」ということが大きな要素になっている。
夢をかなえるのがバーチャル世界というのなら、やはり音楽は人びとの普遍的な夢であり、物語のはじまりでありつづけているのだ。
そして、なにより見ごたえがあったのが、出版社の垣根を超えた名作マンガの原画の数々だった。
第7章「現実へのリンク」と題された原画展は、しりあがり寿『あの日からのマンガ』を筆頭に、社会の空気をいち早くとりいれ、表現してきたマンガの25年史だ。
個人的には、赤石路代、小玉ユキ、水城せとな、西炯子……とつづくflowers作家たちの登場に大興奮。手前は、60年代の長崎を舞台にジャズと少年たちの青春を描いた『坂道のアポロン』。
さいとうちほ『とりかえ・ばや』のあまりに美麗な平安絵巻に釘づけになり、萩尾望都『なのはな』にいたっては、ホワイトの点々すら聖遺物のように神々しく、目頭が熱くなった。
マンガは 現実も、現実を超越した美も、すべてを抱擁している。
第8章は「作り手の『手業』」、つまりメイキングだ。
ITや映像技術が進歩しても、作り手の「ワザ」と「情熱」こそが日本のサブカルを支えている。ラストに手塚治虫原作の『メトロポリス』(2001)の制作過程を追って、展示は終了。
フランス人の記者たちが、ものすごく熱心に質問していたのが印象的だった。
「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展 from 1989」は、明日から8月31日まで開催。「現在」と「未来」を見つけにいきたい。
国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO
- 作者: 中野晴行,氷川竜介,さやわか,メディア・アート国際化推進委員会
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2015/06/25
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