音楽に愛された、女優の一生|赤石路代『暁のARIA』解説

発売中の小学館コミック文庫『暁のARIA』最終第7巻にて、巻末エッセイ「音楽に愛された、女優の一生」を掲載していただきました。

2013年に『マンガと音楽の甘い関係』を上梓して以来、「マンガ好きの音楽ジャーナリスト」あるいは「音楽にこだわるマンガ読み」としてのお仕事をいただく機会が多く感謝でいっぱいですが、なかでもこの『暁のARIA』という作品は、

「高野麻衣が書かなくてだれが書く!」

と立候補してしまうほどの「音楽×女の生きざま」マンガです。

舞台は大正時代。はじまりは海辺の別荘。天使のような歌声をもつ混血の美少女と、王子のような少年の出会い。音楽学校のハイカラお嬢さんと帝大生としての再会。発覚した血のつながり。華やかなパーティー。才能の開花。陰湿ないじめ。支えてくれた教師との許されぬ恋。贈られたアリアと別れ。震災。また再会(中略)その後ヒロインは当初の夢を実現し、ヨーロッパへ渡る。イタリアで晩年のプッチーニに認められ、パリの劇場では劇的な代役デビューで喝采を浴び、イギリス人演出家の父とも再会。世界のプリマドンナになってからも、上海の裏社会、ニューヨークへ――結ばれない運命の恋や激動の昭和という時代背景があいまって、世界一周の大活劇がつづく。

このすさまじいジェットコースター展開、おわかりいただけるでしょうか。

作者は『P.A. プライベート アクトレス』や『ワン・モア・ジャンプ』、『AMAKUSA 1637』(女子高生がタイムスリップして天草四郎に!)の赤石路代。かねてから「この先生とは好きなものがいっしょの気がする…」と感じていただけに、大好きな時代や都市やエピソード、描きたいものをすべてつめこんだんだろうな、とうらやましくなるほどの大河ロマンでした。

私がヒロインだったら夏王さんじゃなく、男性として器が大きく魅力的な大道寺さん(あて馬キャラ)に心変わりするけどな…という所感はさておき、このヒロイン「ありあ」がほんとうに魅力的です。やっぱりプリンセスの必須能力は、美しい歌声と妄信力。著書に記した「歌声が加わると魔性が増幅される」説も増強され、大変うれしく思います。

秋の連休、思いきり大河ロマンにトリップしたいという方にオススメの文庫全7巻。王道少女マンガファンはもちろん、音楽好き、歴史好きの方にも読んでいただきたい作品です。

暁のARIA 7 (小学館文庫 あC 81)

暁のARIA 7 (小学館文庫 あC 81)

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