箱根のポーラ美術館で開催されている「紙片の宇宙 シャガール、マティス、ミロ、ダリの挿絵本」へ。
壁にかけられた「絵画」の枠を超えて、より身近にアートを愉しむことを目的とした「芸術家による挿絵本(リーヴル・ダルティスト)」は、古きよきフランスの愛書文化。画家たちは古典文学や同時代の詩集などから原作を選び、あるいは自ら詩を書き、美しい版画の本を制作したのだそう。
展示室に入ると、「愛書家D氏」ことジャック・ドゥーセの書斎が再現されていた。
アンリ・ルソーの楽園やマリー・ローランサン、ローズ・アドレールが装幀したアール・デコの本などが並ぶ優雅で、かすかに隠微な空間に、思わずため息。
シャガールもフジタもすばらしかったが、お気に入りはマティス(冒頭写真)。マラルメの「詩集」も「JAZZ」も、まさにセッションのように音楽的だ。
絵画と文学と音楽が刺激しあうこの時代が、わたしはほんとうに好きだと思う。
そしてお料理も。
写真は特別コースメニュー「美食でめぐる詩の宇宙」。色彩豊かな挿絵本の世界を、食材で表現した芸術品だ。
オードブルにはモザイク模様の革装丁をイメージした魚介と野菜のテリーヌ、メインディッシュには田園詩(パストラル)風に仕上げた仔羊のポワレ。そしてデザートは「千の紙片」という意味をもつミル・フィーユのバニラアイス添え。もちろん最高においしかった!
あいにくの雨模様で森の散歩は見送ったが、館内で楽しめるアクティビティも豊富で楽しかった。
なにより感じたのは、ホスピタリティ。化粧室の石鹸の匂いまで贅沢な空間に、化粧品メーカーの矜持を感じた。すっかり美術館のファンになったので、年明けの休暇にまた訪れたい。
撮影: チバヒデトシ