今年はじめての日比谷、丸の内へ。
午後の日差しと薔薇が楽しめる三菱一号館横のカフェにて、共演の山田俊幸先生、文京ふるさと歴史館館長・川口さんと歴史講座の打ち合わせをした。
佐藤春夫は、文京区関口にスパニッシュ様式の自邸を建て、小説『西班牙家の犬』を著した文学者だ。
なぜ彼はスペインをモチーフにしたのか。その裏には、当時の日本の文化人たちの交流や、流行していたある種の気分があるではないかーー。というわけで、作家の生涯と作品はもちろん、彼がこだわったスペイン趣味のデザインや美術、音楽までを調べている。
山田先生がこんなすてきなポートレイトを見せてくれた。重要な手がかりとなるこの美しい女性は、ある著名な文学者の妹。こういう女性を手がかりに、歴史の隙間を探っていくのはほんとうに楽しい。
もうひとつ楽しかったのは、課題図書として読んだ『林達夫座談集 世界は舞台』(山口昌男編、岩波書店)。林達夫という思想家をはじめて知ったのだが、70年代に大江健三郎らと銀座「浜作第二店」や竹橋「アラスカ」で行われた座談会は、まさに博覧強記。音楽はもちろん、文学、美術、演劇などの固有名詞が縦横無尽に登場し、森茉莉の元夫・山田珠樹やギタリスト荘村清志といった人々が「君付け」や「あの青年」といった言葉で紹介される。誰それの仲がよかったとか、あそこは喧嘩したとか、いつの世もやっていることは変わらない。
正月の再放送でようやく自分内完結した『ニッポン戦後サブカルチャー史』でもおもったけれど、こういう空気感が伝わるものこそ、一次史料として肝心だと思う。くわしくは講座のあとでまとめたいが、ひさびさの有意義な読書だった。
「大正乙女デザイン研究所」でもお世話になっている山田俊幸先生。このあと東京駅から大阪の大学に戻られた。
※歴史講座「佐藤春夫とスペイン趣味」はすでに申し込み〆切を過ぎましたが、若干名の追加は可能とのことです。ご希望の方は高野(mai.t79@gmail.com)までお問い合わせください。
文京ふるさと歴史館
http://www.city.bunkyo.lg.jp/rekishikan/event/h27_0125.html
- 作者: 山口昌男
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1986/05/15
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