『フランス的クラシック生活』(PHP新書)などを読んでくださった方には周知の事実だけれど、わたしにとってラ・フォル・ジュルネ――そしてこのフェスの生みの親ルネ・マルタンに出会ったことこそが、文筆家としての第一歩だった。
たったひとりの人物との出会いが、人生を変えてしまうことってある。 もしも2005年のラ・フォル・ジュルネに客として足を運ばなかったら、ルネにその“精神”を教わらなかったら、わたしはいまもたんなるOLだったかもしれないし、よくても業界御用達売文業者で終わっていただろう。
ルネの精神とは、こういうものだ。 「音楽を、すべての人と分かち合いたい(partager)」 シンプルだけれど、すごくフランス的だとおもう。 歴史オタク(兼ベルばらファン)としては、すぐにあの言葉が浮かぶ。 「自由、平等、友愛」 この「友愛」の部分が、ルネのいうpartagerにはたっぷりつまっている。
「たとえばU2のコンサートに3万人が熱狂するのに、モーツァルトにできないはずがないだろう? 音楽が本当に好きな人は、ジャンルが違っても一流のものをわかってくれる。だからこそ僕はpartagerするんだ」
そういうルネを、わたしは心から敬愛している。
敏腕音楽プロデューサーの長寿連載「ルネ・マルタンの音楽日記」が、2018年末で最終回を迎えました。編集者時代から12年間、構成・執筆を担当しました。
歴代担当者さま、読者さま、そしてわが師ルネ・マルタンの信頼に深く感謝しています。
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