「音楽」でアニメを語る

『耳をすませば』公開当時、私は主人公・雫とほぼ同い年だった。

おなじように故郷の図書館に通って、小説を書いて、恋をしていた。そして、自分が暮らしているその町が「帰りたい 帰れない さよなら カントリーロード」になることを確信していたので、なんだかものすごくせつなくて、映画館の帰り道でこっそり泣いた。

この主題歌「カントリーロード」は、オリビア・ニュートン・ジョンのカバーで大ヒットした「故郷へかえりたい(Taka me home, Country Roads)」が原曲だった。映画では鈴木敏夫の愛娘・鈴木真美子と宮崎駿がオリジナルの訳詞をつけ、雫役の本名陽子が歌唱した。

ひとりぼっちおそれずに 生きようと夢見てた
さみしさ押し込めて 強い自分を守っていこう

ラブソングの悲哀より、若者の旅立ちへの祝福が強調されているのがジブリっぽいな、と思う。

この曲が、地方出身者のみならず多くの人の心に刺さるのは、大人になることで誰しもが経験する「安住の地との離別」を描いているからだろう。

あのとき確信していた離別も、物語を書く仕事も現実になったが、いまも私は雫が「もっと勉強する」と泣きじゃくるシーンで一緒に泣いてしまう。その勉強には終わりがないからだ。苦しいことも多いけど、不思議に辞めるという選択肢が浮かばないのは、こういうアニメの思い出に支えられているからかもしれないと思う。

 

『耳をすませば』は、私が「CLASSICAL MAGIC」と呼んでいる「魔法」に出会った最初の事件でもある。

「CLASSICAL MAGIC」とは、アニメやマンガの中で流れるBGM、キャラクターたちが奏でるメロディが実在の名曲だったとき、そこに必ず秘められている作り手の意図のこと。読み解くと作品の解像度が一気に上がる。

これを教えてくれたのが、本作における「天沢聖司のバッハ」だった。

そもそも、原作漫画では画家の卵だった彼を、ヴァイオリン職人志望にしたのはアニメ・オリジナルだ。そこには、宮崎駿が象徴する「ジブリの系譜」のクラシックへの憧れが色濃くあるように思う。『耳をすませば』の監督である故・近藤喜文や『新世紀ヱヴァンゲリオン』の庵野秀明もまた、その影響下にいるのではないか。

そんなお話を、池袋コミュニティ・カレッジ主催のオンライン講座ですることになった。

https://cul.7cn.co.jp/programs/program_946952.html

『マンガと音楽の甘い関係』の執筆者で、アニメ雑誌「リスウフ」で「CLASSICAL MAGIC」の連載も持つ高野麻衣さんが、アニメ・マンガの音楽についての日々の考察を披露。クラシックのみならずサントラやポピュラー音楽も含め、ときには大胆な仮説を立てながら、作品を奥深く味わいます。

なにげないあのシーンに込められた秘密を知れば、きっとそのシーンを見返したくなる!

という、音楽をテーマにしたアニメ「読み解きレクチャー」。

拙著のみならず、連載まで読みこんで、熱心にオファーしてくださった担当氏による熱いコピーがたまらない。期待にお応えしたいので、ぜひお気軽に、たくさんの方にご参加いただきたいです。

連綿と受け継がれるクリエイターたちの「魔法」をたくさんの方と語り、伝えていきたい。ご一緒に、アニメへの愛を語り合いましょう!

 

オンライン講座「音楽から読み解くアニメ」

日時 2021年11月20日(土)16:00~17:30
料金 3,000円(税込)

https://cul.7cn.co.jp/programs/program_946952.html

※Zoomによるオンライン講座です。お申し込み方法・注意点はこちらを必ずご覧ください。

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